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[ 2017.06.12 ]

骨軟骨の再生医療、実現への取り組み
―皮下脂肪から取り出した幹細胞で軟骨を再生[整形外科]
再生医療をとりまく環境の変化
2012年に京都大学・山中伸弥教授がiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新しく、再生医療に対する期待は高まる一方です。そのようななか、政府も再生医療の実用化を進展させるべく、2014年に薬事法改正および「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の制定を行い、安全かつ迅速に再生医療が提供される仕組みができあがりました。

九州大学病院でも、病院内で再生医療用の細胞を取り扱う分子・細胞調製センターを設置するなど、再生医療の実現への取り組みを行っています。


    図:単離した幹細胞を凝集させ、立体構造を作る技術[九州大学/佐賀大学]

関節疾患に対する再生医療の期待
変形性膝関節症をはじめとした関節軟骨疾患は高齢者を中心に増加傾向にあります。変形性膝関節症の患者数は国内で1,000万人、潜在的な患者さんも含めると3,000万人の罹患者がいると報告されています。高齢者社会の進行において、膝疾患は寝たきりへの進行など中高年患者の日常生活動作(ADL)の低下の問題につながり、その治療は重要な課題です。


また、若年層で好発する関節軟骨疾患としては、外傷性の離断性骨軟骨炎や骨軟骨骨折などがあり、これらは放置すると変形性膝関節症に進行する恐れがあります。

いずれの疾患においても、関節軟骨は修復力が非常に弱いため一度損傷すると、十分な修復は望めません。また、損傷部を放置することにより、軟骨下骨病変を合併し、二次性の変形性関節症の原因となることが知られています。

このような関節疾患に対し、人工関節やその他の治療法が行われていますが、根本的な骨や軟骨の修復を実現できる再生医療への期待が高まっています。


九州大学病院整形外科における再生医療研究
整形外科・膝関節グループでは、現・佐賀大学 中山功一教授を中心に、患者さん自身の細胞のみで任意の形状の立体構造体を作成する方法の開発に取り組んできました(図)。すでに細胞シートを用いた軟骨再生技術は存在しますが、この細胞構造体を用いる方法では、これまで困難とされてきた細胞による“厚み”を持たせることが可能となり、軟骨表面だけでなく、軟骨と軟骨下骨の双方を損傷した中度から重度の軟骨疾患への臨床応用が期待できます。また、細胞以外を使用しないので、高い安全性が予想されます。

この技術を将来的に実用化するため、2014年の法改正以降、九州大学での第 1号の再生医療研究として、2015年10月から臨床研究を開始しました。臨床研究では、まずは安全性を確認することをおもな目的として、5名の患者さんを対象とし、腹部の皮下脂肪から分離した「幹細胞」(体内で特定の細胞に変身=分化する能力を持った細胞)を培養・増殖させて作製した細胞構造体を膝関節に移植し、移植後 5年にわたり経過を観察します。移植する細胞構造体は、厳しい法律の要件を満たした無菌状態に管理された部屋で作製されます。新規医療なので、安全面での体制も万全に整えて臨んでいます。

臨床研究の結果から、安全性が確認され、骨と軟骨が同時に元通りに再生されることが確認された場合は、より多くの患者さんに届けられるよう、製品としての開発を進める予定です。



詳細情報
本臨床研究の情報は、登録番号UMIN000017944として、
大学病院医療情報ネットワーク研究センターのホームページに公開されています。

臨床研究実施診療科
九州大学病院 整形外科(研究責任者:中島康晴/教授、赤崎幸穂/助教)

臨床研究実施支援
九州大学ARO次世代医療センター
連絡先:092- 642-5858(平日8:30 - 17:00)

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