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[ 2017.06.22 ]

世界初の機能を搭載した、オートメーション型抗がん薬調製支援装置の開発[薬剤部]



図1個人防護具を着用した抗がん薬
     調製


図2 ダブルチェックによる確実かつ
      正確な抗がん薬調製



オートメーション型抗がん薬調製支援装置開発の経緯
抗がん薬は、がんを縮小させる効果がある反面、正常な細胞にとっては毒性を示す薬剤でもあります。抗がん薬を取り扱う医療従事者は、意図せずに気化した抗がん薬を吸入したり、針刺し、あるいは漏出した抗がん薬が皮膚や目に付着した場合、健康被害を発症する恐れがあります。


一方、抗がん薬の調製ミスは、患者さんに深刻な事態を招く恐れがあるため、絶対に調製ミスは許されず、薬剤師は高い集中力を維持し、さらに正確で確実な抗がん薬の調製が求められます(図 2)。九州大学病院薬剤部では、1年間で、1日平均150 - 200本の抗がん薬の調製に、約10名の薬剤師が関与しています。

これらのことから、2014年3月から、九州大学病院薬剤部、日科ミクロン(株)、(株)安川電機との共同で、オートメーション型抗がん薬調製支援装置の開発に着手しました。開発のコンセプトは、①安全性向上(抗がん薬曝露防止、輸液バック汚染防止)、②正確性確保(正確な溶解液投入と薬剤抜き取り、重量監査による担保)、③効率性向上(人的作業負荷軽減、ストックトレイ方式による長時間自動運転)、④付加価値向上(薬剤師をより付加価値の高い業務にシフト)です。


オートメーション型抗がん薬調製支援装置の特徴
オートメーション型抗がん薬調製支援装置は人に近い形状、すなわち、本体から2本のアームが伸び、1本のアームには人と同じ7つの関節があり、きめ細やかな動きを可能にしています。さらに本体には腰のような旋回軸もあるため、より人に近い調製手技を実現しています。この形状は医療従事者にとって動作が直感的に分かりやすく、ヒト型双腕ロボットと見て取れるでしょう。

さらに、特筆すべき機能として、オゾン水による調製後の輸液バックの表面に残存する抗がん薬の洗浄除去ならびにエアブローによる乾燥機能が搭載されたこと、また、20/40/60回分のトレイをあらかじめストック可能なストックトレイ方式とし、長時間自動運転を可能にしたことが挙げられます。これらの機能を備えた抗がん薬調製支援装置は世界初です(図 3)。

オートメーション型抗がん薬調製支援装置
(ヒト型双腕ロボット)
図3 オートメーション型抗がん薬調製支援
  装置の外観


オートメーション型抗がん薬調製支援装置による調製過程

オートメーション型抗がん薬調製支援装置による調製過程の概略を図 4に示します。


図4 オートメーション型抗がん薬調製
     支援装置による調製過程の概略


         トレイセット・自動照合
                    ▼

                  自動調製
                      ▼

                  重量鑑査
                      ▼

            自動洗浄・自動廃棄

図5  オゾン水洗浄槽による洗浄性能


まず、薬剤師が、抗がん薬のバイアル、輸液バック、注射器などを専用トレイにセットし、ストッカー部分に配置します。その後、あらかじめ照合確認を終えた専用トレイが、密封された無菌調製エリア内に自動的に搬入されます。 


次に、このエリア内での2本のアームが、専用トレイにセットされた抗がん薬のバイアルを取り出し、そのバイアルに注射針を刺し込んで、指示量を抜き取ります。この時、受信した処方内容や患者データをもとに、抗がん薬の重量を精密電子天秤で測定し、抜き取った抗がん薬を輸液バッグに注入します。また、使用済みのバイアルや注射器は、専用のゴミ箱に自動的に廃棄されます。


最後に、輸液バッグ表面をオゾン水で洗浄し、輸液バッグの混注口にキャップが取り付けられた後、再び専用トレイに戻され、ストッカー部分に搬出されます。なお、抗がん薬の調製における正確性を確保するため、重量監査や調製過程の画像が記録されます。オートメーション型抗がん薬調製支援装置による抗がん薬の調製時間は人が行う場合に比べて約5倍かかりますが、これは重量監査を行うなど、人での作業にはない工程が入っているためです。


オートメーション型抗がん薬調製支援装置による
   調製精度

現在まで、凍結乾燥製剤を含む10種類以上の抗がん薬についてオートメーション型抗がん薬調製支援装置による調製手技を評価しています。調製精度については誤差許容値(±5%以内)を満たしています。また、オートメーション型抗がん薬調製支援装置による自動調製と薬剤師による手動調製による調製精度を比較したところ、調製精度は遜色ないことを確認しています。


オートメーション型抗がん薬調製支援装置に実装した
  オゾン水洗浄槽の洗浄性能評価

抗がん薬調製後の輸液バックの表面には抗がん薬が残存する可能性があります。残存する抗がん薬を洗浄除去するためオートメーション型抗がん薬調製支援装置にオゾン水洗浄槽を実装しました。オゾン水洗浄槽により輸液バッグ表面の抗がん薬が洗浄除去できることが明らかとなりました(図 5)。


オートメーション型抗がん薬調製支援装置への期待
抗がん薬調製支援装置の導入により、抗がん薬の調製における、抗がん薬曝露低減や調製ミス防止が可能です。また、削減できる薬剤師のマンパワーを患者さんへの服薬指導や他職種との連携強化やカンファレンス参加などに充てることができます。さらに、副作用のモニタリングなどに基づき、副作用の発現状況などの確認を行うとともに、医師に対し、必要に応じて薬剤を提案するなど臨床薬剤業務の充実がより図られます。


【九州大学病院薬剤部】
TEL: 092- 642 - 5921
http://www.hosp.kyushu-u.ac.jp/shinryo/chuo/01/index.html

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