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[ 2017.06.15 ]

網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療[眼科]

眼科領域の遺伝子治療
目は直径約24mmのとても小さな臓器ですが、私たちは外界情報の約80%をこの小さな臓器を通して取得しています。目が見えなくなること、すなわち「失明」により、患者さんの
生活の質QOL)は著しく低下し、社会活動は大幅に制限されることになります。

「網膜色素変性(以下、色変)」を代表とする遺伝性網膜疾患は現時点で有効な治療法が確立されていない眼科領域の難病です。近年、これらの疾患を対象とした遺伝子治療の臨床応用が数多く報告されています。欧米では複数の疾患に対してすでに一定の安全性と治療効果が明らかとなり、眼科領域でも遺伝子治療が標準治療の一つとして認められる日が近づいています。



色変に対する視細胞保護遺伝子治療
色変は、網膜に存在する光を感じる細胞(視細胞)が徐々に失われていく遺伝性の病気です。一般に、暗い所で見えにくいという症状(夜盲)が幼少時からあり、その後少しずつ見える範囲が狭くなっていき、やがて失明に至る可能性があります。臨床的に明確な効果のある治療法はなく、予後は不良とされています。

一般に遺伝子治療では、病気の原因となる遺伝子異常を治療しますが、色変はさまざまな遺伝子異常によって生じるため、原因遺伝子を治療するのは難しいと考えられています。そこで、視細胞を保護する作用をもつタンパク質であるヒト色素上皮由来因子(hPEDF)の遺伝子を搭載したサル免疫不全ウイルス(SIV)ベクター(SIV-hPEDF)を目に注射して、創り出されたhPEDFタンパク質によって視細胞の喪失を防ぎ、色変患者さんの視機能低下を防ごうと考えました(図1)。


図1 視細胞保護遺伝子治療
      ヒト色素上皮由来因子の遺伝子を網膜色素上皮細胞に導入することで、
      ヒト色素上皮由来因子のタンパク質が目の中で分泌され、視細胞を護る


臨床研究の実施状況
動物実験で治療効果と安全性が確認できたので、臨床研究実施計画(安全性試験)を立案しました。

第 1ステージとして 5名の被験者に低用量のSIV-hPEDFを投与し、第 2ステージで15名の被験者に高用量を投与する計画となっています。2012年 8月に厚生労働大臣の了承を受けることができ、翌年 3月から臨床研究はスタートしました。これまでに低用量群 5名への投与が完了していますが、全身的ならびに眼局所における重篤な副作用は観察されず、今後は高用量群への投与を実施する予定です(図 2)。



図2 第 1症例の術中写真
     筆者が術者となりSIV-hPEDFを投与した


今後の予定
この臨床研究に引き続いて医師主導治験(第1/2相)を実施する予定で、現在準備を進めています。

この治験で治療効果を確認し、色変の治療薬としてSIV-hPEDFを認可してもらいたいと考えています。さらに、神経細胞保護遺伝子治療という観点から、緑内障に対する遺伝子治療も実現したいと考えています。遺伝子治療を眼科領域における難病に対する新しい治療法として定着させることが、今後の目標です。


【臨床研究実施診療科】
九州大学病院 眼科(研究責任者:池田康博/准教授)
http://www.hosp.kyushu-u.ac.jp/shinryo/geka/07/index.html

【臨床研究実施支援】
九州大学ARO次世代医療センター
連絡先:092-642-5858(平日8:30 - 17:00)

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