耳鼻科領域 経鼻内視鏡手術 内視鏡外科手術

2023年4月19日

耳鼻科領域

経鼻内視鏡手術

慢性副鼻腔炎、鼻副鼻腔腫瘍、アレルギー性鼻炎、頭蓋底腫瘍、眼窩内腫瘍

耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師  村上 大輔

耳鼻科領域の内視鏡手術について、
耳鼻咽喉・頭頸部外科 村上 大輔講師が回答します。

耳鼻科領域での内視鏡手術は、いつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例数がありますか?

当科では、1995年から内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術を行っています。現在では、年間100名を超える患者さんに手術を行い、これまでに2,000名以上の実績があります。2020年、2021年、2022年の手術内訳を表 1に示します。また2018年8月から脳神経外科と耳鼻咽喉科で頭蓋底外チームを結成し、年間40例程度内視鏡下での頭蓋底手術を行っています。
表 1 内視鏡下鼻副鼻腔手術の内訳 (2020年、2021年、2022年)
手術名 2020年度 2021年度 2022年度
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型(副鼻腔単洞手術) 2 5 19
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型(選択的副鼻腔手術) 45 37 35
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型(汎副鼻腔手術) 36 49 40
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅴ型(拡大副鼻腔手術) 10 9 12
内視鏡下鼻中隔手術型(骨、軟骨手術) 18 24 4
内視鏡下鼻腔手術型(下鼻甲介手術) 28 29 54
経鼻腔的翼突管神経切除術 9 6 4
鼻副鼻腔腫瘍摘出術 1 9 10
眼窩骨折観血的手術(眼窩ブローアウト骨折手術) 0 1 1
鼻骨変形治癒骨折矯正術/変形外鼻手術 2 3 13
涙嚢鼻腔吻合術 0 0 0
眼窩内腫瘍摘出術(深在性) 3 5 2
視神経管開放術 0 2 1
合計 154 179 195

手術の適応についてお聞かせください

主な対象疾患は内服薬での治療で改善しない慢性副鼻腔炎です。副鼻腔はいくつかの空洞に別れ、鼻腔とつながっていますが、副鼻腔の病的な粘膜を手術で取り除き、各副鼻腔をひと続きの空洞として、鼻腔へ大きく開放します(図 1)。最近は喘息を合併し、鼻内のポリープや嗅覚障害を伴う難治性の副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)に対する手術が増加しています。

またアレルギー性鼻炎の患者さんに対しても内服薬で症状が改善しない、できるだけ内服薬を服用したくないなど患者さんの病態やニーズに合わせて鼻水や鼻づまりを軽減するために、後鼻神経切断術や下鼻甲介粘膜下骨切除術、鼻中隔矯正術なども行っています。
術前後のCT 画像
図 1 術前後のCT画像

術前:両側の篩骨洞上顎洞炎を認める
術後:篩骨洞、上顎洞は中鼻道に大きく開放、副鼻腔炎は寛解している

一般的な術後の経過は、いかがでしょうか

術後問題がなければ、手術当日から食事を含む通常の生活を送ることができます。創部からの出血を予防するために鼻内にガーゼを 2日間程度留置することもありますが出血が収まれば術後 3-4日程度で退院となります。鼻内手術では術後の鼻処置を適切に行わないとせっかく手術を行っても傷が癒着したり開放部分が閉鎖したりすることがあります。退院後も鼻内の傷が完全に治るまでの約 1-3か月は、月に 1回程度、外来受診して傷の治りを確認します。

手術創と手術後の経過はどのようになりますか?

鼻の穴から内視鏡と手術器具を挿入し手術をするので顔に傷が残ることはありません(写真)。
写真 4K内視鏡手術
写真 4K内視鏡手術 鼻の穴から内視鏡、手術器具を挿入し、拡大した術野をモニターで見ながら手術を行う。 危険な部位はナビゲーションシステムを用いて確認を行っている。

おもなメリットは何でしょうか

一番の利点は、内視鏡で拡大して手術を行うので良好な視野が得られ、狭い鼻内でも安全で確実な手術ができることです。

また、従来の副鼻腔手術は上唇の裏を切ってアプローチをする方法でしたので、術後の頬の腫れ、強い痛み、頬の痺れが残るといった症状がありましたが、鼻内手術ではそういった症状はありません。

現在の取り組みについてお聞かせください

近年のCT画像や手術器具の進歩は目覚ましいものがあります。術前検査で病変位置、深さ、広がりが正確に把握できるようになったため、それらの情報をもとに検討を行い、個々の患者さんにもっとも適した方法を選択し、実施しています。

かつては顔にメスを入れていた前頭洞、眼窩底骨折、鼻腔腫瘍の手術も極力侵襲の少ない内視鏡を用いた鼻内手術を行っています。

また解剖学的に難しい場所(頭蓋底や内頸動脈、視神経管近傍)にある病変に対しては、安全のため4K内視鏡とナビゲーションシステムを併用した手術を行っています。最新の 4K技術搭載の内視鏡システムが多数導入されており、安全、安心に手術ができる体制となっています。
さらに他科との合同手術も積極的に行っています。鼻閉を伴うような外傷性斜鼻や鞍鼻の手術は形成外科と合同で行い(外鼻形成は形成外科医が行い、鼻腔内は内視鏡を用いて耳鼻咽喉科医が整復)、手術症例数は徐々に増加しています。また、内視鏡下経鼻頭蓋底手術も脳神経外科と合同チームを組み、鼻副鼻腔と頭蓋底の境界領域にある嗅神経芽細胞腫、若年性血管線維腫、軟骨肉腫、繊維性骨異形成症、眼窩内腫瘍なども積極的に手術を行っています。

内視鏡手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています

耳鼻咽喉・頭頸部外科外来までお気軽にお問い合わせください
(TEL:092-642-5681 初診日: 火・木  再診日:月・水・金)。
九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科
http://www.qent.med.kyushu-u.ac.jp/