九州大学病院歯科麻酔科では、麻酔学を通して「患者さんを安全に管理するために必要な基礎的医学知識や臨床経験」を学ぶことを目標としています。現在の学部教育では全身管理に関わる教育が少ないために、卒業の時点では知識が少ないという現状があります。さらに、初期臨床研修でも同様な知識や臨床経験という点で遅れが出ます。高齢化社会を迎えて合併症を抱えた人々も増え、特に歯科麻酔の分野では、さまざまな障がいのある患者さんや問題を抱えた小児患者さんもたくさんいます。このような症例に対しては、われわれ歯科麻酔科医師でなければ十分に対応することはできません。個々の歯科麻酔科医師が、その社会的使命を認識し、日々謙虚に研鑽を重ねつつ臨床に臨むことが重要です。
九州大学病院では、プログラムによって初期臨床研修の際に、歯科麻酔科研修を受けることができます。後期研修や、大学院への進学も可能です。この他に、他科や他施設からの研修も積極的に受け入れています。
まず、基礎医学の知識の充実を図り、十分な臨床経験をもとに、さらに個々の症例をより詳細に評価することで、臨床経験を増やすことを目標とします。症例は中央手術室、外来手術室ともに月曜日から金曜日まで行われ、全身麻酔法・鎮静法を学ぶだけではなく、全身管理に関する広く体系的な知識を習得することを目標としています。毎朝8時10分からカンファレンスを行います。手術室で麻酔管理を行う症例の術前回診は、各病棟で行います。また、月曜日に医局会と抄読会、金曜日には口腔外科の合同症例カンファレンスがあり、当科も参加します。ペインクリニックカンファレンスへの参加も可能です。さらに、各学会の認定医や専門医取得を目標とする先生方に向けて、十分な経験と指導医による教育も行っています。
大学院に進学した場合には、半年から1年間臨床に従事した後に、臨床研究もしくは基礎研究に従事します。歯科麻酔学分野内の臨床研究として「周術期の代謝栄養管理」があります。また、基礎研究として「疼痛管理」に関わる研究があり、この他にも臨床関連の研究があります。
また、基礎の教室に移動して研究を行うこともできます。今までの実績として、本学歯学府内や医学府の基礎の研究室で、研究に従事した大学院生も多数います。さらに、社会人枠の大学院生として、他施設に所属しながら各自テーマをもって、現在も研究を進めています。
学部教育においては、歯科麻酔学と歯科全身管理学の講義を担当し、各分野で活躍する著明な先生方(2020年度:岩坂日出男先生、飯島毅彦先生、牛田享宏先生、瀬尾 憲司先生をはじめ多数の講師陣)を非常勤講師に迎えて、質の高い講義を行っています。
九州大学病院歯科麻酔科では、歯科麻酔や全身管理について積極的に学び、歯科麻酔学に貢献してくれる新しい人材を求めています。われわれと一緒に臨床や研究に従事してくれる方をお待ちしています。