消化器領域 肝臓 内視鏡外科手術
消化器領域
肝臓
肝細胞がん・移転性肝がん・肝のう胞・肝腫瘍
肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科 准教授 吉住 朋晴
消化器領域:肝臓の内視鏡手術について、
肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科 吉住 朋晴准教授が回答します。
肝臓の内視鏡手術はいつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例がありますか?
わが国では、1991年に肝のう胞に対する腹腔鏡手術が初めて報告されています。1992年には肝細胞がんに対する腹腔鏡手術が行われ、以後急速に症例数が増加しています。当科では1994年から腹腔鏡下肝臓手術を開始し、2020年12月までに456例の腹腔鏡下肝臓手術を行ってきました。表 1に腹腔鏡下肝臓手術の疾患内訳を示します。また、図 1に最近の肝切除術における腹腔鏡手術数の推移を示します。
表1 腹腔鏡下肝臓手術主な疾患内訳
図1 開腹・腹腔鏡下肝切除術年度別症例数(2010-2020)
どのような患者さんが手術の適応になりますか?
一般的な術後の経過についてお聞かせください
当科での腹腔鏡下肝切除では、通常クリティカルパスを用いています。手術は全身麻酔で行いますが、手術の翌日にはお腹に入っている管(ドレーン)を抜去し、水分・食事摂取が可能です。傷が小さいので、術後の痛みは少ないというメリットがあります。肝切除の術式・切除する肝臓の大きさにもよりますが、術後 5-7日で退院可能です。
手術創はどのようになりますか?
肝臓の開腹手術を安全に行うには、お腹に大きな傷を開ける必要があります。腹腔鏡手術では、 5mmから12mmの穴を 5-6か所に開けて手術を行うことが可能です。腹腔鏡で肝切除を行った時の傷(写真 1)、従来の開腹手術で肝切除を行った場合の傷(写真 2)を示します。
写真 1 5mm-12mmの穴を 5-6か所に開けて行う腹腔鏡手術
写真 2 従来の開腹手術で肝切除を行った場合の傷
この手術のおもなメリットは何ですか?
腹腔鏡手術に用いる手術器具の改良や術式の工夫により、腹腔鏡下手術でも、開腹手術とほぼ同じ手術を行うことが可能となってきました。腹腔鏡による拡大視効果や気腹による止血効果により、術中出血量は開腹手術と同等か、より少ないとする報告もあります。また、従来の傷ではお腹の筋肉(腹筋)を大きく損傷せざるをえませんが、腹腔鏡手術では筋肉の損傷が少ないため、術後の回復も早くなります。
現在の取り組みについてお聞かせください
当科では、腹腔鏡下肝切除術にいち早く取り組んできました。その後の手術時の体位・手術器具などのさまざまな工夫により、現在では肝切除術の半数以上を腹腔鏡で行っています。当科は、わが国の肝移植施設で最も多くの肝移植を行っています。将来、生体肝移植ドナー手術が保険適用になった際にも、ただちに対応できるよう、準備を進めています。