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病院からのお知らせ 2018年03月23日

あなたに合った歯科治療 Vol.1 -口腔顔面痛外来-

はじめに

私たちのこれまでの患者さんのご相談内容です。
 
  • 歯の神経を取ったのに痛い
  • 検査で歯や歯茎に問題はないと言われた
  • 歯を抜いた後に唇や舌にしびれがある
  • 口が開かない。噛みづらい
  • 顎が疲れて、頭・首・肩が重い
  • 触っただけで歯茎がヒリヒリする
  • 舌や口の中が痛い
  • 触っただけで電気が走る様に痛い

近くの歯科医に相談するけどわからない、治療を続けても治らない。こんな症状にお悩みはありませんか。このような続く痛みは口腔顔面痛かもしれません。口腔顔面痛は歯が痛いような感じですが、歯だけが原因ではないため、歯科治療だけでは治りません。専門の治療が必要になります。

口腔顔面痛の病因は?

歯以外の問題なので様々な原因があります。ガイドラインではこのように分類されます。
 
  1. 顎の筋肉に由来する痛み: 筋・筋膜性歯痛 (筋・筋膜痛症、緊張型頭痛)
  2. 歯の神経に由来する痛み: 神経障害性歯痛(三叉神経痛、帯状疱疹、求心路遮断痛)
  3. 頭痛に関連する痛み: 神経血管性歯痛 (片頭痛、群発頭痛)
  4. 蓄膿症に関連する痛み: 上顎洞性歯痛
  5. 心臓発作に関連する痛み: 心臓性歯痛
  6. 心理的な因子に関連する痛み: 精神疾患または心理社会的要因による歯痛
  7. その他の様々な疾患により生じる歯痛: 特発性歯痛(非定型歯痛を含む)
(非歯原性歯痛診断治療ガイドライン 日本口腔顔面痛学会雑誌 4(2) 2-88, 2011)

歯の周りの神経や筋肉などが絡み合っています。当初は歯に限局した痛みも、時間が経つほど神経の伝達機構が変調を起こし、痛みに対して過敏になっていきます。さらに脳内の神経ネットワークも影響します。これに心理的なストレスが加わって複雑に痛みを形作っています。そうなるともはや歯だけの問題ではなく、歯の治療だけでは全て取り除くことができないために、長く痛みが続くと考えられています。

口腔顔面痛の頻度は?

日本での詳しい研究がありませんが、イギリスの研究では人口の2%程度が口腔顔面痛に悩んでいると推測されています。またたくさんの歯の研究をまとめたシステマティックレビューでは、歯の神経治療(根管治療)を受けた歯の5%は半年以上痛みが続き、3.4%はその痛みは歯からではないと述べられています。
なお、全身の慢性疼痛に悩む人は国民の13-25%程度、40歳以上の中高年では46%と報告されています。

口腔顔面痛の医療損失は?

治らないために複数の医療施設で検査、治療を受けられています。私たちの研究では、痛みが生じて口腔顔面痛の診断にたどり着くまでに平均で4年の期間がかかり、その間には3件以上の医療施設の受診歴がありました。

抜歯や神経の処置を多くが受けており、一人あたりの治療費は平均約22万円でした。仮に国民の2%、260億人の口腔顔面痛患者さんが22万円かかっていたと仮定すれば、年間に1400億円の治療費が治らない痛みに費やされていると試算されます。これは歯科の年間医療費2兆8000億円の5%にあたります。通院のための休業、交通費など社会損失はこれに含まれません。口腔顔面痛による社会損失の実際はこの数倍にのぼると思われます。決して軽視できる額ではなく、いつまでも治らない痛みに患者さんの生活の質は著しく損なわれています。

口腔顔面痛の診断

口腔顔面痛外来では適切な治療を行うための各種検査を行っています。

1.医療面接

詳しい病歴を伺います。どのような痛みなのか、いつからか、どれくらい続くのか、何が痛みを招くのか、薬は効いたのか、などです。さらに痛みによる生活の質の変化、質問票を用いたストレスの評価も行います。
 

2.神経・筋検査

専用の機械を使用して、感覚の強さ、筋肉の痛みの程度などを計測します。
 

3.必要に応じて、レントゲン検査、MRI検査、血液検査などを行います。

口腔顔面痛の治療

1.認知行動療法

痛みに対して歯以外の可能性を探り、思いがけない癖(食いしばりなど)があることを認識します。そしてその症状を強くする行動を修正することが治療につながります。これは副作用もなく、効果も高いと言われています。
 

2.薬物療法

鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬などを用いて痛みを和らげていきます。
 

3.神経ブロック療法

痛む部位に行うトリガーポイントブロック、顔面全体の血流を亢進させて痛みの緩和をはかる星状神経節ブロックなど治療を選択していきます。超音波エコーを用いて観察しながら安全で効果的にブロック治療を行うようにしています。

写真 咬筋をエコーで観察。筋肉のコリの部分や筋膜の肥厚を観察。

口腔顔面痛外来の治療実績

施設:日本口腔顔面痛学会研修認定施設 日本歯科麻酔科学会認定施設
専門医資格:日本口腔顔面痛学会認定医・専門医・指導医, 日本頭痛学会専門医,日本歯科麻酔学会認定医・専門医
期間(年度) 新患者(人) のべ受診者数(人)
2011/04/01-2012/03/31 82 821
2012/04/01-2013/03/31 106 1454
2013/04/01-2014/03/31 139 2164
2014/04/01-2015/03/31 123 2291
2015/04/01-2016/03/31 123 2116
2016/04/01-2017/03/31 118 1588
2017/04/01-2018/03/31 124 1485

 
診断内訳(2011年4月より新患総数573名の診断 重複あり)
筋・筋膜痛 261
神経障害性疼痛 190
手術による神経障害性疼痛 200
心因性疼痛 73
非定型歯痛 59
三叉神経痛 46
頭痛・片頭痛・群発頭痛 28
舌痛症・Burning Mouth Syndrome 25
顔面神経麻痺 23
歯科疾患 22
帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛 13

 
治療内容(重複あり)
医療面接・認知行動療法 7380
薬物療法 6317
光線療法 2593
星状神経節ブロック 2319
トリガーポイントブロック 2319
神経・筋検査 833
三叉神経ブロック 47
32