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病院からのお知らせ 2025年03月18日

【プレスリリース】世界初の膵癌特異的スクリーニング法を開発 -膵癌の早期発見に期待-

2025年3月12日
 
世界初の膵癌特異的スクリーニング法を開発
-膵癌の早期発見に期待-
 

 九州大学病院/九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科学分野の中村雅史病院長/教授のチームは、胃の内視鏡検査の際に十二指腸液を採取することで簡便かつ安全に膵癌のスクリーニングを行う世界初の検査法を実用化しました。
 膵癌は膵臓に発生する悪性腫瘍であり、2021年の統計(部位別がん死亡数)によると、膵癌による死亡数は男性で第4位、女性で第3位となっています。また、膵癌は年間の罹患数と死亡数がほぼ等しく、早期診断や治療の難しさが課題とされています。膵癌の罹患率は年々上昇しており、いかに早期診断を行い、効果的な治療につなげるかが重要な課題となっています。
 九州大学病院/九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科学分野の中村雅史病院長/教授と、国内外19施設および国内2企業の研究チームが開発した新しい検査方法は、胃の内視鏡検査の際にカメラの先端からカテーテルを出して十二指腸液を採取します。その後、十二指腸液に含まれるタンパク質を解析し、膵癌の早期発見につなげます。
 この新しい検査法は、健康診断や人間ドックのオプション検査としての導入準備が進められており、共同研究を実施した福岡赤十字病院では2025年春以降に導入予定です。


【研究の背景】
 膵癌は、腹痛や不快感といった症状から始まることが多いものの、これらの症状は一般的な消化器疾患と類似しているため、最初に胃の検査を受けても異常が見つからず、病状が進行してから診断されるケースが少なくありません。
 膵癌の診断には血液検査(腫瘍マーカー)も用いられますが、これらのマーカーは膵癌以外の消化器がんでも上昇することがあるため、膵癌に特化した簡便なスクリーニング検査はこれまで存在しませんでした。

【研究の内容と成果】
 本研究では、膵癌の診断が遅れる理由を客観的なデータから検証し、新たな検査法の開発に取り組みました。その結果、胃内視鏡検査(胃カメラ)の際に、膵炎のリスクがあるセクレチン(膵液の分泌を促進するホルモン)を投与せずに、膵液を含む十二指腸液を採取し、膵癌細胞が産生する特定のタンパク質(S100P)を安全に測定できるシステムを開発しました。この検査法を開発し、有効性を検証するために、国内外で合計1,140名 (膵癌患者333名,膵疾患患者430名,健常者377名)を対象とした4回の臨床研究を実施しました。最終的な本検査の検査性能は、感度82.4%、特異度77.6%、陽性的中率62.2%、陰性的中率90.8%でした。

【今後の展開】
 本検査法は、胃内視鏡検査のオプションとして提供されるだけではなく、原因不明の腹痛がある方や膵癌リスクが高い方(糖尿病、肥満、喫煙歴、家族歴、膵嚢胞を有する方)に対するスクリーニング検査としての活用が期待されています。最終的には、臨床性能試験を行い、薬事承認を目指します。


【お問い合わせ先】

●研究に関すること
   九州大学病院 胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科
   井手野 昇
 Mail:ideno.noboru.033@m.kyushu-u.ac.jp

●報道に関すること
 九州大学病院 総務課企画広報室
 TEL:092-642-5205
   Mail:ibskoho@jimu.kyushu-u.ac.jp