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病院からのお知らせ 2026年03月11日

【プレスリリース】九州大学、株式会社ティムスと急性腎障害予防・治療薬の共同研究を開始

未だ有効な治療薬が存在しない急性腎障害の革新的予防・治療薬候補TMS-008の研究開発を加速
 

国立大学法人九州大学(以下「九州大学」)大学院医学研究院 臨床医学部門 循環器外科学分野/九州大学病院 心臓血管外科の塩瀬明教授/科長は、株式会社ティムス(以下「ティムス」)とTMS-008の急性腎障害(acute kidney injury; AKI)に対する薬効を評価する共同研究を開始しました。
ティムスの主要開発品目TMS-008は心臓手術後AKIの予防・治療薬候補です。
本共同研究は心臓手術に限らず、より広範な要因によるAKIに対するTMS-008の予防・治療効果を検討するものであり、将来的にTMS-008 を用いるAKI治療の対象患者層を拡大できることが期待されます。


共同研究の概要

(1)研究背景
a)九州大学の研究実績
九州大学病院 心臓血管外科(塩瀬明科長)では、ウサギ体外循環(人工心肺)モデルを用いて、体外循環が腎臓に及ぼす病態生理に関する研究を行っています。この背景に、体外循環を伴う心臓手術後に急性腎障害AKIの発症頻度が上昇することがあります。直近では、ウサギ体外循環モデルで見られるAKIに対するナトリウム・グルコース共輸送体2SGLT-2)阻害薬ダパグリフロジンの効果を検証しました1)
 

図1.ウサギ体外循環(人工心肺)モデルの模式図 Ao:大動脈、BCA:腕頭動脈、BP:血圧、CVP:中心静脈圧、ECG:心電図、EJV:外頸静脈、IVC:下大静脈、LCCA:左総頸動脈、LSCA:左鎖骨下動脈、PA:肺動脈、RA:右心房、RCCA:右総頸動脈、RSCA:右鎖骨下動脈、RT:直腸温度、SVC:上大静脈。
ダパグリフロジン前投与は体外循環中のウサギにおいて血清クレアチニン、血中尿素窒素及び尿細管障害を有意に改善しました。
 

図2.ウサギ体外循環モデルにおけるダパグリフロジンの効果 腎機能マーカー(血清クレアチニン及び血中尿素窒素(BUN))及び腎臓の尿細管障害スコア。 データは平均値及び標準偏差。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。CPB:体外循環、Dapa:ダパグリフロジン。
1) Matsuda K, et al. Acute Dapagliflozin Administration Ameliorates Cardiac Surgery-Associated Acute Kidney Injury in a Rabbit Model. Circulation Journal. 88(9):1488−1498 (2024).

b)ティムスの研究実績
ティムスでは、黒カビ由来の生理活性物質SMTP化合物群の開発を手掛け、その一つTMS-007の脳梗塞患者を対象とした前期第Ⅱ相試験に成功しています2)。また、TMS-007と一部の作用が異なるTMS-008を開発中です。TMS-008 は、可溶性エポキシドハイドロラーゼ阻害に基づく抗炎症作用及び抗酸化作用によって急性腎障害の治療薬等としての可能性が期待されます。 2025年にTMS-008の健康成人を対象とした第相臨床試験を完了し、現在、心臓手術後のAKIの予防・治療におけるTMS-008の効果を確認するため、待機的心臓外科手術患者を対象とした次相臨床試験の準備を進めています。
マウスを用いた非臨床試験で、TMS-008は血清クレアチニン、クレアチニンクリアランス、血中尿素窒素といった腎機能マーカーを正常レベルまで改善し、尿細管再吸収機能の指標である電解質(ナトリウム及び塩素)排泄率及び腎障害に伴い上昇する尿中NGALや血清HO-1の上昇を有意に改善しました(図3)。

2) Niizuma K, et al. Anti-Inflammatory Thrombolytic JX10 (TMS-007) in Late Presentation of Acute Ischemic Stroke. Stroke. 55(12):2786−2794 (2024).

図3.術後AKIを想定したマウスモデルにおけるTMS-008の効果の概念図
(2)本共同研究の目的: 
これまでの両者の研究実績と経験を併せて、心臓手術に限らず、より広範な要因によるAKI の予防・治療を目標として、新たなウサギAKIモデルを作製し、TMS-008の効果を検討するとともに薬理作用の機序を明らかにすることによりTMS-008開発を加速します。

(3)期待される成果: 
TMS-008 を用いるAKI 治療の対象患者を拡大できる(より多くの患者にTMS-008を適用できるようになる)ことが期待されます。

【九州大学について】
 国立大学法人九州大学は、2030年に向けた大学の目指す姿として「総合知で社会変革を牽引する大学」を掲げ、これまで蓄積してきた「知」と「人材」を最大限に活用し、地域社会と協働して、社会的課題の解決や、持続可能で人々の多様な幸せを実現する社会づくりに貢献する取り組みを展開しています。
「脱炭素」や「医療・健康」「環境・食料」など、世界が注目する最先端の研究活動を展開し、広大なキャンパスを生かした実証実験や大学発ベンチャーなどにより、研究成果の社会実装を推進しています。

【九州大学病院について】
九州大学病院は、国立大学病院では最大規模の約1,400床の病床を有し、入院・外来患者数、高難度手術や臓器移植を含む手術件数などの診療面や、臨床研究ならびに国際化の取り組みなどにおいて、国内屈指の実績を有する大学病院です。九州大学病院心臓血管外科は九州唯一の心臓移植実施施設として急速に実績を伸ばしています。さらに、自己骨格筋芽細胞シート治療の実施や、「虚血性心筋症に対するiPS心筋細胞シートの臨床試験」に参画するなど、アンメット・メディカル・ニーズに応える取り組みを積極的に推進しています。

【急性腎障害について】
急性腎障害は、数時間から数日の間に腎機能が急激に低下する疾患ですが、これまでのところ急性腎障害を適応として承認された医薬品はありません。冠動脈バイパス手術または心臓弁手術後の急性腎障害の発症率は43%、当該症例の30日以内の死亡率は20%に達するという報告があります3)。このようなことから、AKI治療薬の開発が待望されています。

3)Machado MN, et al. Acute kidney injury based on KDIGO (Kidney Disease Improving Global Outcomes) criteria in patients with elevated baseline serum creatinine undergoing cardiac surgery. Rev Bras Cir Cardiovasc. 29(3):299−307 (2014)

【ティムスについて】
株式会社ティムスは、アンメット・メディカル・ニーズの克服を目指し、革新的な医薬品の発見と開発に注力し、研究段階から臨床段階までを手掛けるバイオ医薬品企業です。リードパイプラインである  TMS-007JX10)は、急性期脳梗塞治療薬として前期第相臨床試験において優れた有効性と安全性が示唆されました。その他にもアンメット・メディカル・ニーズの大きい疾患に対する治療薬パイプラインを有しています。詳細はティムスウェブサイト(https://www.tms-japan.co.jp)をご覧ください。
 

【お問い合わせ先】
九州大学病院心臓血管外科
TEL092-642-5557
FAX092-642-5566
Mailoffice@med.kyushu-u.ac.jp

株式会社ティムス
お問い合わせフォーム:   
https://cloud.swcms.net/tms-japanPublic/ja/contact/inquiry3.html

研究開発担当者:  主任研究員 長谷川 啓子