血管外科 外科系

基本概要

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診療科紹介

我々が取り扱う疾患は、大動脈瘤、動脈閉塞症、静脈瘤などです。大動脈瘤、動脈閉塞症は動脈硬化が原因となる疾患で、高齢化、食の欧米化などにより、患者さんの数は年々増加傾向にあります。動脈硬化性疾患は全身病で、その治療に携るにあたっては、外科的技術のみならず、内科的な知識も必要となってきます。我々は豊富な知識と確実な技術で動脈硬化性疾患の治療に当たるように、日々研鑽を積んでいます。そして、外科的血行再建術と血管内治療(カテーテル治療)の利点欠点を十分に理解した上で、患者さんに応じた術式選択を行っています。

主な対象疾患とその治療

大動脈瘤

大動脈瘤とは、大動脈が正常径の1.5倍以上に拡張した状態で、成因は動脈硬化によるものがほとんどです。大動脈瘤は無症状で経過することが多いですが、大きくなると破裂します。破裂する前には腰痛、背部痛などの症状があり、一旦、破裂すると致命的です。破裂した時には意識レベルが低下したショック状態となって救急搬送されるため、手術を無事に乗り切っても、脳、腸管、腎臓などに重篤な合併症をきたすことがあります。つまり、大動脈瘤の治療に重要なことは、大きくなる前に見つけて、破裂する前に治療をすることです。治療には開腹人工血管置換術と低侵襲なステントグラフト内挿術があります。

腹部では5cm以上、胸部では6cm以上で破裂の危険性が高くなると言われています。人工血管置換術は、開腹あるいは開胸下に大動脈瘤に到達し、大動脈の血流を一旦遮断してから、動脈瘤を切除、人工血管で置換する方法です。確立した術式で、10年、20年先まで安心です。しかし、手術創が大きい、手術侵襲がやや大きいといった欠点があり、若年で術前併存疾患が少ない患者さんに、お勧めしています。入院期間は2週間程度です。ステントグラフト内挿術は、カテーテル治療の一種で大動脈瘤の内腔にステントグラフトを通して大動脈瘤に圧がかからなくする方法です。開腹人工血管置換術と比較して、手術創も小さく、大動脈を遮断しないために低侵襲な治療法です。形態学的に向いていない症例があることと、術後にエンドリークを生じるという問題点があります。エンドリークとは、大動脈瘤の血栓化を阻害する因子の総称で、ステントグラフトと大動脈壁の間隙からの漏れや、ステントグラフトのつなぎ目からの漏れなどは対処可能ですが、腰動脈からの逆流によるものは難治性で、ひいては瘤径の増大から再手術につながります。入院期間は1週間程度です。

動脈閉塞症

慢性動脈閉塞症と急性動脈閉塞症があり、慢性動脈閉塞症の成因は動脈硬化によります。症状が軽度である、I度(冷感・しびれ)やII度(間欠性跛行)の患者さんに対しては、禁煙指導、運動療法、薬物療法を開始します。また、II度で改善不十分な症例やIII度(安静時痛)、IV度(潰瘍・壊疽)の重症虚血肢の患者さんに対しては、確実な血行再建が求められます。血行再建には、バイパス術などの外科的血行再建術と、低侵襲なカテーテル治療とがあります。急性動脈閉塞症の成因の多くは心房細動からの塞栓症です。慢性と異なり、6-8時間というgolden timeがあり、治療時期を逃すと肢切断や重篤な合併症から致命的となることがあります。

バイパス術は、バイパス材料として、人工血管と自家静脈が挙げられます。膝関節を越えないバイパス術においては、開存率は同等なため症例に応じて人工血管と自家静脈を使い分けています。膝関節を越えるバイパス術においては、人工血管では開存率が不良なため、自家静脈を使用します。自家静脈が細径な症例や、すでに使用されている症例などでは、血管内治療を併用して自家静脈の節約を行います。糖尿病や透析などにより、足部に潰瘍・壊疽を生じている患者さんでは、潰瘍治癒に十分な血流の供給のためにバイパス術が勧められます。入院期間は2週間以上です。血管内治療は低侵襲であり、繰り返し行うことができるという利点があります。また、カテーテル技術の進歩に伴い、狭窄病変のみならず閉塞病変に対しても安全に行うことができるようになってきています。開存率はバイパス術の方が優れていますが、デバイスの進歩に伴い徐々に改善されてきています。バイパス術、血管内治療のいずれの術式を用いても、血流状態を改善させることで、生活の質(QOL)の低下を防ぎ、肢や生命の予後を改善させることが重要と考えています。入院期間は2-3日間です。

静脈瘤

妊娠や出産、立ち仕事などにより逆流防止弁が傷害を受け、静脈血の逆流を生じた病態が静脈瘤で、静脈の拡張、蛇行そして瘤化を認めます。静脈瘤は、下肢のだるさ、疼痛、腫脹、こむら返りなどの症状で日常生活に支障が生じている時に、治療をお勧めしています。

治療は弾性ストッキングの着用、もしくは手術になります。静脈の逆流が原因で下腿に色素沈着や皮膚炎、最終的には潰瘍形成をきたすことがあり、この場合は積極的に手術を施行しています。手術にはラジオ波(レーザー)焼灼術やストリッピング術などがあります。

従来の治療法はストリッピング術ですが、皮下血腫や創部痛により、日常生活や仕事に復帰するまでに期間を要することがあり、若年で仕事のある方や活動性の高い方は、手術を敬遠する傾向にありました。そのため、我々は低侵襲なラジオ波焼灼術を導入しています。ラジオ波焼灼術は、大伏在静脈内に電極を挿入し、静脈壁に接触した電極からラジオ波を流して熱を発生させ、蛋白凝固を引き起こし静脈壁の変性・閉塞をきたすカテーテル治療です。手術創も小さく、術後の疼痛軽減に繋がっています。また、術後の再発率もストリッピング術と遜色ないとの報告も多数見られるようになってきています。入院期間は2-3日間です

その他

我々の特色は、外科的手術とカテーテル治療の両方の選択肢を有するということです。このことで、患者さんの状態に応じた術式選択を行うことができます。また、どちらの治療も適応でない方に対する血管新生療法の治験も行っています。入院診療は主治医制ですが、手術は全員で行います。外来診療はチーム制です。