１．基本方針

　九州大学病院（以下「本院」という。）は、「患者さんに満足され、医療人も満足し、医療の発展に貢献する病院を目指す」ことを理念としている。本院で人生の最終段階を迎える患者に対して適切な意思決定を支援することは、その理念に沿うことになると考え、「人生の最終段階の医療における適切な意思決定支援に関する指針（以下「本指針」という。）を策定する。
　本院の職員は本院の理念、本指針及び厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等様々なガイドラインの内容を踏まえ、多職種から構成される医療チームにおいて、患者とその家族等に対し適切な説明と話し合いを重ね、患者の意思決定を尊重し、医療・ケアを提供することに努める。
　患者の意思は、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて変化するものである。医療チームは、適切な情報の提供と説明を行い、適宜必要に応じて話し合いを重ねる。また、意思決定支援のプロセスにおいて話し合った内容は、診療録に分かりやすく記録する。

２．意思決定支援が重要となる場面

（１）人生の最終段階
　・がんの末期のように、予後が数日から長くとも２－３か月と予測が出来る場合
　・慢性疾患の急性憎悪を繰り返し予後不良に陥る場合
　・脳血管疾患の後遺症や老衰など数か月から数年にかけ死を迎える場合

（２）回復の見込みがない状態
　「人生の最終段階」にある患者のうち、
　・不可逆的な全脳機能不全と診断された場合
　・生命維持に必須である複数の臓器が不可逆的機能不全となり、移植など
　　の代替手段がない場合
　・現状治療を続行しても近いうちに死亡が予想される場合
　・回復不可能な疾病の末期
　など、疾病や外傷に対して実施可能なすべての医療上の措置を適切に行ったとしても、回復の可能性がなく、
　死が間近に迫っている状態。



３．人生の最終段階における具体的な医療・ケアの方針決定支援

（１）患者の意思が確認できる場合
　・患者による意思決定を基本とし、家族等も関与しながら、厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケ
　アの決定プロセスに関するガイドライン」を参考に、医療チームが協働し、医療・ケアの方針を決定する。
　・患者が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があるため、予め家族等を含めて話し合いを行う。
　
（２）患者の意思が確認出来ない場合
　・家族等が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善である医療・ケア　
　の方針を医療チームとともに慎重に検討し、決定する。
　・家族等が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて、家族等と医療チー　
　ムで十分に話し合い、決定する。
　・家族等がいない場合及び家族等が判断を医療チームに委ねる場合は、患者にとって最善と思われる医療・ケ　　
　アの方針を医療チームが慎重に検討し、決定する。
　・決定が困難な場合等、医療チームが必要と判断した場合は、その申し入れにより、本院の臨床倫理コンサル
　テーションチーム（状況に応じて臨床倫理委員会）でその方針を審議する。

４. 回復の見込みがない状態における支援

回復の見込みがない状態の患者に対しては、本院が定める「回復の見込みがない状態における延命処置及びDNAR（心肺蘇生を行わない指示）に関するガイドライン」に準じ、医療行為の開始・見合わせ・変更及び終了等に関する意思決定を支援する。

５．参考資料

・人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン　　厚生労働省
・九州大学病院　回復の見込みがない状態における延命処置及びDNAR（心肺蘇生を行わない指示）に関するガイドライン　　九州大学病院