研究と教育 小児歯科・スペシャルニーズ歯科

基本概要

外来窓口 北棟5F
初診日 月-金
再診日 月-金
ご連絡先 092-642-6465

研究

小児歯科・スペシャルニーズ歯科は、小児医療センターと総合周産期母子医療センターに属していることから、さまざまな疾患を患った患児を診察することが多くあります。このことから全身疾患に関連する口腔内の特徴的な所見の検索や、全身や口腔内の病態解明に関する研究を推進しています。

特に当科では、永久歯に交換する時に脱落する乳歯歯髄から、単離される間葉系幹細胞を用いたトランスレーショナルリサーチに注目し、骨系統や消化器系、中枢神経系に関連する疾患に着目して、研究を進めています。単離した間葉系幹細胞を用いてその疾患の解明などの基礎的な研究を行い、その研究成果をもとに、疾患の治療法や予防法の開発を目的に、実験動物を用いての研究も行っています。

また、研究は歯学部内の研究室や医学部、学外の研究室との共同研究も行い、幅広い基礎研究や臨床研究を行うとともに、人材の交流も積極的に行っています。将来は、この乳歯歯髄由来の間葉系幹細胞を用いた疾患の治療や予防の臨床応用に繋げたいと、日々、研究と臨床に力を注いでいます。

 口腔組織由来細胞を用いた先天性疾患に関する研究について

1.ヒトゲノム・遺伝子解析研究について
九州大学病院では、病気に関係する遺伝子や薬の効き目に関係する遺伝子を見つけ出したり、遺伝子技術を取り入れた病気の検診のための技術開発を行ったりしています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」といいます。その一つとして、九州大学小児歯科・スペシャルニーズ歯科では、現在先天性疾患の患者さんを対象として、口腔組織由来細胞を用いた先天性疾患に関する「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和8年2月28日までです。

2.研究の目的や意義について 
先天性疾患は神経・筋疾患、内分泌異常や免疫異常など多岐にわたり、治療法はそれぞれの臓器に適した条件下で研究する必要があります。口腔組織由来幹細胞は、神経細胞、骨芽細胞や肝細胞などを作り出すことができる細胞です。この幹細胞は、治療過程で廃棄される口腔組織から調製可能なため、安全に収集可能です。また、細胞調製に特別な遺伝子操作を必要としないため、極めて安全な再生医療のための細胞源として注目されています。
私たちの研究は、先天性疾患の患者様より口腔組織由来幹細胞を調製し、各先天性疾患の症状に即した臓器の細胞を作り出し、健常者の細胞と遺伝子の状態や機能を比較することで病態の解析を行い、新規治療法の開発につなげること、さらに再生医療のための細胞源として、口腔組織由来幹細胞の活用を検討することを目的としています。

3.研究の対象者について 
九州大学病院小児歯科・スペシャルニーズ歯科において平成26年11月17日から平成28年5月24日までに治療を受けられた方の、治療に必要な過程で生じた口腔組織 (乳歯、永久歯、歯周組織等)、患者群75名・対照群5名を対象にしています。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

4.研究の方法について 
 九州大学歯学研究院小児口腔医学分野で、提供していただいた口腔組織から、幹細胞を作成します。次に、小児口腔医学分野と分子口腔解剖学分野で、この幹細胞から神経細胞や骨細胞等を作成し、DNA、RNAやタンパク質等を取り出し、患者と健常者で比較することで疾患の原因を調べます。また、この幹細胞を使用して、遺伝子編集や細胞移植による治療の可能性を探る研究も行います。様々な種類のRNAの量を調べる解析は、RNAを匿名化した後郵送で株式会社ダナフォーム(外部企業)へ送り解析します。

5.研究に関する情報公開について
この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

6.利益相反について
九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は文部科学省科学研究費補助金による研究費でまかなわれており、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092-642-5774)

7.研究の実施体制について 
この研究は以下の体制で実施します。

研究実施場所 九州大学歯学研究棟小児口腔医学分野
(分野名等)   九州大学歯学研究棟分子口腔解剖学分野
研究責任者   九州大学大学院歯学研究院小児口腔医学分野 准教授 山座 治義 
研究分担者   歯学研究院 小児口腔医学分野 教授 福本 敏
歯学研究院 小児口腔医学分野 助教 佐藤 浩
歯学研究院 小児口腔医学分野 助教 廣藤 雄太
歯学研究院 小児口腔医学分野 助教 千葉 雄太
歯学研究院 小児口腔医学分野 学術研究員 韓 旭
歯学研究院 小児口腔医学分野 大学院生 張 虞
歯学研究院 小児口腔医学分野 大学院生 孔 軍
歯学研究院 小児口腔医学分野 大学院生 孫 梟
歯学研究院 小児口腔医学分野 大学院生 董 双山
歯学研究院 小児口腔医学分野 大学院生 田中 絢子
歯学研究院 小児口腔医学分野 大学院生 伊藤 洋介
歯学研究院 分子口腔解剖学分野 准教授 山座 孝義
歯学研究院 分子口腔解剖学分野 助教 加藤 大樹
歯学研究院 分子口腔解剖学分野 助教 園田 聡一朗
歯学研究院 歯科矯正学分野 大学院生 村田 早羅
歯学研究院 歯周病学分野 大学院生 Fouad Zakaria
病院 小児歯科・スペシャルニーズ歯科 臨床准教授 増田 啓次
病院 小児歯科・スペシャルニーズ歯科 助教 小笠原 貴子
病院 小児歯科・スペシャルニーズ歯科 助教 高山 扶美子
病院 小児歯科・スペシャルニーズ歯科 医員 木舩 崇
病院 小児歯科・スペシャルニーズ歯科 医員 佐藤 綾子
病院 口腔画像診断科 医員 山内 恵利佳

業務委託先  企業名等:株式会社ダナフォーム
所在地:神奈川県横浜市鶴見区末広町1-1-43

8.相談窓口について 
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

事務局
(相談窓口)    担当者:九州大学歯学研究院分子口腔解剖学分野 助教 加藤 大樹
連絡先:〔TEL〕092-642-6402
      〔FAX〕092-642-6468
メールアドレス:kato@dent.kyushu-u.ac.jp

教育

小児歯科・スペシャルニーズ歯科では小児や障がい児、障がい者への歯科医療に関する基本的な診察体系の教育を行っています。具体的には、歯科疾患の2大疾患であるう蝕や歯周疾患の治療と予防、乳歯や永久歯、過剰歯抜歯や粘膜疾患に対する外科的処置、歯列不正へのアプローチに関する診療への教育を行っています。

歯学部の学生や初期研修医には、上記の診療への介助や当科スタッフの指導の下での口腔衛生指導、治療を行うことにより、小児や障がい児、障がい者の歯科医療を教育しています。また、当科は、小児医療センターと総合周産期母子医療センターに属していることから、さまざまな疾患を患った小児や障がい児、障がい者の診療を行い、歯科診療における全身管理の重要性や留意点、全身管理方法の修得も目指すとともに、関連診療科との連携についても学べるように教育を行っています。

以上のように、幅広い知識をもった歯科医師の育成を行い、将来は小児歯科専門医や障がい者歯科認定医などの取得を目指すとともに、大学病院や地域歯科医療に携わる人材養成も行っています。