研究と教育 歯周病科

基本概要

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再診日 月-金
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研究

臨床研究に関して
 

【はじめに】

歯周病科では、「慢性歯周炎に対する歯石除去と局所抗菌薬投与の併用効果」に関する臨床研究を行っています。歯周病は、歯周病原細菌の感染により発症する感染症で、成人において歯の喪失原因の第一位を占める慢性炎症性疾患です。歯周炎が進行すると歯を支える顎の骨が溶けて、歯を失うことになります。 また、歯周病原細菌の感染は、糖尿病、心臓血管疾患や動脈硬化症などの全身疾患を増悪する可能性があります。歯周病を伴う有病者に対して、歯周病原細菌の除去を目的とした歯周治療は、必要不可欠といえます。 そこで、本研究では、歯周病の患者さんに協力してもらい、より生体への負担や副作用が少なく、効率的に歯周ポケット内の歯周病原細菌を除去する方法を調査します。
 

【対象】

当科を受診し、歯周病と診断された患者さんで、下記の条件に該当する方
・年齢:40歳以上
・歯が10本以上残っている
・4mm以上の歯周ポケットが30 % 以上存在する
 

【研究内容】

口腔内全体の麻酔を使わない歯石除去時に、以下の2群に分けて行います。
① 試験群:歯石除去 + 局所抗菌薬の歯周ポケット注入
② 対照群:歯石除去 + 生理食塩水で歯周ポケット洗浄
ともにブラッシング指導と同時に実施します。同様に1、2、3週目にも行います。評価は、初回の検査時にX線検査・細菌検査・臨床観察・血液検査を、4、 8週目診療時に細菌検査・臨床観察・血液検査を行います。局所抗菌薬は、一般的に歯周病治療で頻用されている、歯科用抗菌剤(塩酸ミノサイクリン)軟膏を用います。
 

【個人情報の管理について】

本研究に関する資料等を扱う際には、患者さんの個人保護に十分配慮します。また、得られた被験者の資料などは、研究の目的以外に使用しません。
 

【研究期間】

2019年9月30日まで
 

【医学上の貢献】

通常の歯周病の検査では、現在の炎症状態について詳しく評価できませんが、血液検査を行うことにより、炎症の状態を具体的に数値化することができます。検査結果は、後日お伝えすることができますので、歯周病の重篤度を知ることができます。また、通常の保険診療の歯周病検査では、歯周病の細菌検査は行えませんが、歯周ポケット中の細菌検査を行うことで、細菌の種類や変動数などを客観的に調べることができます。今後の歯科医学の発展に寄与し、多くの方の利益に貢献することを目指しています。

教育

歯周病は宿主―寄生体相互作用の結果、組織が炎症性に破壊されるとともに、疾患が重症化すると生体にとって軽微な慢性炎症として作用するやっかいな疾患です。
このため、歯周病の病因を正しく理解し、病因論に基づいた治療法を確立するうえで、宿主(感染細菌)と局所の防御機構(あるいはそれに影響を及ぼす環境・遺伝要因など)のバランス、また全身の炎症反応などを詳細に観察したうえで診断を下し、個々の病態に応じた、いわゆるオーダーメードの医療を展開する必要があります。また、究極の目標は失われた組織の再生です。
再生能力も個々に異なることを理解したうえで、先進的なオーダーメード再生療法の開発が望まれます。 紀州の医師であり世界で初めて全身麻酔による手術を行った華岡青洲は、「活物窮理」(個々に病態を異にする臨床像を注意深く観察することによって、真理を究明すること)の概念を提唱したと言われます。
歯周病の病態も個々に異なることから、この精神が重要になります。現代医学では、注意深く病態を観察(あるいは把握)する上で、ベースとなる基礎分野の知識は必須です。これらの知識や技術を駆使して正確な病態把握に努める必要があります。歯周病学分野はこのような概念に基づいて"研究マインドを持った臨床家"を育成するとともに、高度先進的な歯周医療の開発を目指します。