研究
腎・高血圧・脳血管内科が属する病態機能内科学(旧第2内科)の臨床研究の核となるのは久山町研究を基盤とした“コホート研究”です。当科では各疾患を対象としたコホート群を整備し、久山町研究とタイアップして幅広い臨床研究を展開しています。さらにコホート研究で得られた知見をもとに、病態解明のための基礎研究を行っています。
- 腎臓研究室では、慢性腎臓病の患者を対象に福岡腎臓病データベース研究 (Fukuoka Kidney disease Registry: FKR) を2012年から開始し、これまで4,000人を超える患者さんのデータと登録しています。このデータを用いて、慢性腎臓病とさまざまな生活習慣と関わりを解明し、慢性腎臓病の合併症や転帰に関する要因解析や、腎不全進展阻止および治療効果や合併症に係わるバイオマーカー同定を行っていきます。その他にも腎生検コホート、血液透析患者を対象とした Qコホート研究、腹膜透析患者を対象とした福岡腹膜透析レジストリー、さらに第一外科と協力して腎移植コホートのデータをもとにした多彩な臨床研究を展開しています。
- 高血圧・血管研究室では、高血圧患者を対象に福岡高血圧コホート研究 (Fukuoka Hypertension Cohort: FHC) を2014年から開始し、通信機能付き家庭血圧計を用いて測定した信頼性の高い家庭血圧測定値を用いて、心血管病や認知症の発症との関連を検討しています。その他、自由行動下24時間血圧測定を用いて測定した血圧および血圧変動性に関与する因子の同定と臓器障害との関連や、職域集団において、高血圧発症に関与する生活習慣・運動習慣等を含めたさまざまな危険因子の同定、高血圧と睡眠時無呼吸症候群との関係など、高血圧に関する幅広い臨床研究を展開しています。
- 脳循環代謝研究室では、発症7日以内の急性期脳卒中患者の登録データベース研究(Fukuoka Stroke Registry: FSR) を2007年より開始し、これまで15,000人を越える患者さんのデータをもとに臨床研究を行っています。これまで、FSRの解析によって脳梗塞の転帰不良因子として、高血糖・インスリン抵抗性・蛋白尿・スタチン非使用・認知症などを報告してきました。またFSRのサブ研究として脳梗塞のバイオマーカー探索研究 (Research for Biomarkers in Ischemic Stroke: REBIOS)を行い、脳梗塞の病態や転帰に関連するバイオマーカー・タンパク質を複数同定しています。
- 糖尿病研究室では、外来通院中の糖尿病患者を対象とした福岡県糖尿病患者データベース研究 (Fukuoka Diabetes Registry: FDR) を行っています。これまでに5,131名の糖尿病患者を登録し、追跡調査を行っています。肥満や早食い、睡眠時間、喫煙といった生活習慣や、食物繊維摂取量、初潮年齢が糖尿病に深く関連することを報告してきました。 また、がんや死亡、骨折になりやすい患者の特徴を調査しています。
教育
九州大学病院においては、病態機能内科学(第二内科)は腎・高血圧・脳血管内科ならびに消化管内科を中心に診療を行い、内分泌代謝・糖尿病内科、光学医療診療部、腎疾患治療部、救命救急センターなどの部署でも、医局員が診療と研究に従事しています。また第二内科は腎臓、高血圧、脳循環、消化器、糖尿病、内分泌、肝臓、久山(臨床疫学)の8つの研究室から構成されています。それぞれの研究室では、スペシャリストとしての研鑽を積むと同時に、研究室同士のつながりにより内科全般に対する幅広い知識の習得が可能です。
内科系医師を志す場合、まず目指すべき内科専門医の取得には内科全般にわたる幅広い診療経験が必要となります。第二内科は冒頭に記しましたように内科の幅広い分野の診療を担っています。“一般内科の上に専門性が存在する”、“全身を診る”といった長年受け継がれてきた診療姿勢をもとに、九州大学病院や関連施設では各専門分野の医師が垣根を超えて密に連携しています。九州大学病院における第二内科のメイン病棟である北10階病棟では、腎・高血圧・脳血管内科と消化管内科の混合病棟としての運用がなされ、学生・初期研修医・内科専攻医にとって新専門医制度に対応して疾患に偏りなく内科全般について研修でき、内科の多分野の知己を深めて「全身を診る」機会を提供しています。教授による総回診以外に、各研究室による診療グループ単位での回診やカンファレンスを通じて、多方面から総合的に治療方針を検討し、診療を進めています。
また若手スタッフが中心となり、主に初期研修医・専攻医を対象に各診療グループによるレクチャーを定期的に行っています。そして病診連携の必要性が高まる今日、「内科疾患カンファレンス」と題した近隣病院や開業医の先生方との病診連携勉強会を定期的に行っています。学外から著名な講師の先生を招聘して特別講演を行い、最新の情報を共有し連携体制を整えることで、診療の円滑化を図ることを目指しています。
初期研修後の進路は研究室によって若干異なりますが、共通することは、まず一般内科医として必要な知識と技量を身につけ、内科専門医を取得した上で、各専門分野の専門医を目指します。その後、希望に応じて、臨床医、留学、大学院進学、研究者などの道を進むことになります。
詳しくは当科のホームページ(
http://www.intmed2.med.kyushu-u.ac.jp)を参照ください。