診療科紹介
当科では食道から大腸にいたるまでの全ての消化管にみられる病気の診断と治療を行っています。がんや悪性リンパ腫を中心とする消化管腫瘍については的確な診断と治療選択を心がけ、ポリープや早期がんに対する内視鏡治療も数多く行っています。クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患についても数多くの患者さんの診療を担当し、最新治療を含めた幅広い治療経験を有しています。必要に応じて消化器外科とも連携をとり、個々の患者さんに最適な治療選択を行っています。
主な対象疾患とその治療
消化管内科では、①胃がん、②悪性リンパ腫、③潰瘍性大腸炎、④クローン病、⑤大腸ポリープの診断・治療を主に行っています。
胃がんは、わが国において罹患率や死亡数が多い悪性新生物です。胃がんはヘリコバクターピロリ菌感染から慢性胃炎をへて生じることが多いと考えられていますがピロリ菌に感染していない人にも生じることもあります。わが国ではヘリコバクターピロリ菌の種類が発がんに関与するタイプであること、感染率が高いことが知られています。胃がんの症状は体重減少や食欲不振、倦怠感、貧血による症状などがありますが、早期の胃がんは無症状で検診や偶然見つかることも多くあります。
胃がんは進行度により内視鏡治療、外科手術、化学療法など治療法が異なります。当科では治療方針決定のために内視鏡検査とバリウムによる検査を担当し、正確な診断を心がけています。また一部の早期がんは内視鏡による切除治療を行っています。内視鏡により治療できた場合、手術や化学療法に比べ、より低侵襲で生活の質が保たれる利点があります。
悪性リンパ腫の多くはリンパ節にできますが、消化管はリンパ節以外では比較的高率に悪性リンパ腫が発生する臓器です。消化管の中でも胃に生じることが最も多く、ヘリコバクターピロリ菌感染に起因する低悪性度であるMALTリンパ腫が最も多く、ほかにも濾(ろ)胞性リンパ腫や、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など悪性度が異なるリンパ腫があります。無症状で見つかることも多い反面、体重減少や微熱、体の表面で触れるリンパ節が大きくなり気づくこともあります。
悪性リンパ腫はそれぞれ悪性度や病期の進行度により、ピロリ菌の除菌療法、化学療法、放射線療法、手術などの治療法を組み合わせて行います。ピロリ菌の除菌は、胃酸を抑制する薬と抗生物質の組み合わせにより治療します。化学療法は、数種類の抗がん剤を組み合わせて治療します。B細胞に対する抗体を組み合わせることで、治療効果も高まっています。さらに近年、抗がん剤の副作用に対する治療薬が進歩しています。
潰瘍性大腸炎は原因不明の慢性の大腸炎です。腸内細菌や免疫または腸管の防御機構が破たんしていることが考えられていますが、原因不明です。直腸から連続して大腸の表面にびらんや潰瘍といった病変が生じます。大腸内視鏡検査などにより診断をします。症状では下痢や下血、発熱などを引き起こします。重症時には腸管が破れたり大量下血を生じたりすることもあります。また腸管外に皮膚や関節に炎症ができることや、目の症状を伴うこともあります。
病気の活動性や経過は患者さんにより大きく異なるため、個々の患者さんに応じた適切な治療選択が必要となります。多くの場合、腸管局所の炎症を鎮める薬で治療しますが、重症な時はステロイドや、免疫抑制薬、最近はTNFαという炎症を引き起こす因子に対する抗体薬による治療を組み合わせて行っています。
クローン病は若年者に発症することの多い慢性の炎症性腸疾患です。遺伝的因子や食事や腸内細菌など環境因子が関係して免疫反応が過剰になっていると考えられていますが原因は分かっていません。主に小腸に病変がある場合と、大腸にある場合、さらに両方にある場合があります。潰瘍やアフタと呼ばれる浅い粘膜障害が所々にできることも多く、口から肛門まで全ての消化管の病変が生じる可能性があります。発熱や倦怠感、下痢、下血などの症状が出現します。消化管内視鏡検査や小腸造影検査により診断をします。
病気の活動性や経過は、患者さんにより大きく異なるため、個々の患者さんに応じた適切な治療選択が必要となります。腸管の安静により改善することも多く、消化された栄養剤や点滴による栄養療法のほかに低脂肪・低残渣(消化しやすい)の食事が勧められます。また腸管の炎症を抑える薬や、免疫抑制剤、炎症性サイトカインを抑える抗体製剤を中心とした治療を行っています。腸管が狭くなったり、他の臓器とつながったりする合併症もあり、狭くなった場合は内視鏡や外科的に広げる治療も行います。
大腸ポリープの多くは、腺腫と呼ばれ大腸のもっとも内側の粘膜に生じる良性の腫瘍です。コブのように盛り上がった形が多いのですが、横に平べったく広がるものや凹んだ形などさまざまあります。大きくなればがんになる可能性もあります。検便などの大腸がん検診や偶然見つかることが多いようです。検便の便検査は感度が鋭敏ではないため一般的には検診では2日の便を採取し1日でも陽性の時は大腸内視鏡による精密検査を行います。大腸内にたくさん多発する患者さんもいますし、遺伝的に多発する病気もあります。
大腸ポリープは、大腸がんの発生抑制のためにも早期の段階で正しく発見し、必要に応じて治療を行っていくことが重要となります。大きさや悪性度により、大腸ポリープは内視鏡による切除を行います。また病変の深さによって一部の早期大腸がんも内視鏡による切除を行っています。消化器内科では大腸内視鏡やバリウムを用いた診断と内視鏡治療を担当しています。
その他
当科では食道・胃・十二指腸・大腸のポリープ切除や早期がんに対する内視鏡手術を行っています。主に大腸ポリープが対象となる内視鏡的粘膜切除術に加えて、早期癌ではより広い病変も切除可能な粘膜下層剥離術による治療例が大半を占め、年々治療件数も増加しています。