診療科紹介
当科では、造血器疾患、固形腫瘍、心血管疾患に対して最新の医学的知見に基づいた医療をすすめています。総合内科としての特色を活かして、さまざまな分野の専門知識や技術を駆使して診療を行っています。白血病など造血器悪性腫瘍の診療では、抗がん剤・分子標的治療、難治症例に対しては、免疫細胞療法、造血細胞移植を実施しています。また消化器癌・頭頸部癌・軟部肉腫や原発不明癌などの固形腫瘍に対する抗がん剤・分子標的治療も積極的に行っています。心血管内科としてあらゆる心血管病に対して、薬物療法およびカテーテルインターベンション、アブレーション、ペースメーカー治療を積極的に行っています。
主な対象疾患とその治療
急性白血病(急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病)
骨髄中の血液細胞が腫瘍化し、正常な血液細胞が造れなくなり、貧血や発熱、出血などの症状を伴う病気です。また、腫瘍細胞が全身の臓器に浸潤し、急速に病状が悪化するために、早急な診断と治療が必要です。
病型や遺伝子異常に応じて、抗がん剤、分子標的薬による治療を行い、骨髄中のわずかな白血病細胞で治療効果を判定し、治療方針を決定しています。難治症例に対しては、同種造血細胞移植を、国内最大規模の無菌治療部で行っています。さらに、新規薬剤や免疫細胞療法の、臨床試験や臨床治験も多数実施しています。
リンパ節、または全身の臓器に存在するリンパ組織にあるリンパ球が腫瘍化する病気です。リンパ節が腫れ、病変部位により多彩な症状を伴い、発熱や体重減少を伴うこともあります。ゆっくり進行するタイプから、急速に進行するタイプまで様々な病型があり、正確な病理診断が必要です。
病型に応じて、抗がん剤、分子標的薬による治療を行い、難治症例に対しては、自己または同種造血細胞移植を行っています。さらに、新規薬剤や免疫細胞療法の、臨床試験や臨床治験も多数実施しています。
骨髄中の形質細胞が腫瘍化し、血液や尿中に異常な免疫グロブリンが増え、腎不全、貧血、骨折などを伴う、高齢者に多い病気です。臓器障害に応じ、治療を行います。
分子標的薬、免疫調節薬による治療、比較的若い患者さんには自己造血細胞移植を行っています。さらに、新規薬剤の、臨床試験や臨床治験も多数実施しています。
骨髄不全症(骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、骨髄増殖性腫瘍)
骨髄中で異常な造血細胞が増加、または造血能力が低下し、正常な血液細胞が作れなくなる病気です。骨髄異形成症候群や再生不良性貧血では、白血球減少による感染症、貧血、血小板減少による出血症状を伴います。血球数や遺伝子異常により、治療方針を決定します。
分子標的薬、サイトカイン、免疫抑制療法による治療を行います。難治症例に対しては、同種造血細胞移植を行っています。さらに、新規薬剤の、臨床試験や臨床治験も実施しています。
消化器がんは、わが国のがんの中でも発症頻度が高い疾患です。早期がん・局所進行がんの場合は、治癒を目指して内視鏡治療や外科手術や病期によっては、術前・術後の化学(放射線)療法を行います。一方、進行・再発がんの場合は、延命・症状緩和を目的として抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療を行います。当科では、こうした術前/術後の化学療法や進行・再発がんへの化学療法を行います。
食道がん
免疫チェックポイント阻害薬と5-FU、シスプラチンの併用療法、免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせが標準治療として行われます。その他、パクリタキセルやドセタキセル、5-FUとオキサリプラチンの併用療法、S-1なども用いられます。
胃がん
進歩により、治療法も多様化しています。進行・再発の胃がんでは、HER2, Claudin18, MSI /MMR, PD-L1 のようながん細胞を調べることで明らかになるバイオマーカーに基づき、どのような抗がん剤治療を行うか決定します。
大腸がん
RAS、BRAF、MSI、HER2のようながんの遺伝子変異や蛋白発現状態、またがんの大腸の中で位置する部位(右側の大腸や左側の大腸)を参考に、抗がん剤の組み合わせや種類を選択します。抗がん剤としてフッ化ピリミジン系抗がん剤、オキサリプラチン、イリノテカン、トリフルリジンチピラシル、抗EGFR抗体薬、BRAF阻害薬、MEK阻害薬、HER2阻害薬、血管新生阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあります。
希少がんは、様々な種類があります。当科では、軟部肉腫、小腸がん(十二指腸・空腸・回腸がん)、肛門管がん、GIST、神経内分泌腫瘍、腹膜中皮腫はじめ、様々な希少がんの診療に他の診療科とも連携しながら治療を行っています。
肉腫
腫瘍細胞の形により、非円形肉腫と円形肉腫に大別されます。
脂肪肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、未分化多形肉腫などの非円形肉腫の治療は、手術が主です。手術が難しい例では重粒子線治療も検討されます。病期により術前や術後の化学療法が検討されます。切除不能の場合には、アドリアマイシン、イフォスファミド、エリブリン、パゾパニブ、トラベクテジンなどの抗がん剤治療や、症状緩和目的に放射線治療を行います。
円形肉腫に含まれる横紋筋肉腫、Ewing肉腫、BCOR遺伝子異常肉腫、CIC遺伝子再構成肉腫などの治療では、多剤併用の抗がん剤治療、手術、放射線治療による集学的な治療が行われます。
原発不明がんとは、悪性であることが組織学的に証明されている腫瘍のうち、十分かつ適切な検査を行っても、もともと発生した臓器が分からない腫瘍のことをさします。
原発不明がんは多様であり、特定の治療を行うことが推奨される種類と、それら以外に分類されます。これらの分類をもとに、抗がん剤の種類含め治療方針が検討されます。免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブも原発不明がんの治療に用いられます。
心房細動などの頻脈性不整脈では動悸、脈の乱れなどの症状を認めます。
血液・腫瘍・心血管内科では、これに対して、経皮的カテーテル焼灼術を行い、良好な成績を得ています。徐脈性不整脈に対してはペースメーカー治療を行っています。患者さんの負担の軽い治療によって、比較的短い入院日数となっています。
心臓の筋肉(心筋)に栄養と酸素を送る血管(冠動脈)が動脈硬化などで狭くなったり詰まったりすることにより心筋に虚血を引き起こす疾患で、胸痛などの症状がみられます。
カテーテル治療により、狭くなったり詰まったりした血管に対して拡張治療(冠動脈形成術)を行い、良好な成績が得られています。
心臓の弁に異常をきたすと、動悸・息切れの原因になります。
大動脈弁狭窄症に対しては従来手術による弁置換が主流でしたが、最近では心臓外科と協力してカテーテルを用いた大動脈弁置換術を行い、患者さんの負担を軽減しています。僧帽弁狭窄症や閉鎖不全のカテーテル治療も行っています。
歩くと足が痛くなる閉塞性動脈硬化症に対する診断、治療を血管外科と協力して行っています。動脈硬化性のみならず、膠原病性血管疾患、炎症性血管疾患、先天性血管疾患など、血管系の疾患全てを対象にしております。
外来ではフットケア、足外来を行っています。下肢以外の腎動脈、鎖骨下動脈、頸動脈などの診断と血管インターベンションも施行しています。
その他
造血器と固形悪性腫瘍に対し、診断時の詳細な検査でその進行度、悪性度などを評価し、最適の治療法を選択します。心血管疾患では総合内科の特徴を活かし、局所治療のみならず、全身的な合併症の診断、治療を行います。治療方針決定に際して、各分野の専門医資格を有する医師が、患者さんにつねに正確な情報を提供すると同時に、精神的・社会的な背景を考慮した治療を選択します。さらに臨床試験の実施を通じて、医学の進歩に貢献したいと考えています。