研究と教育 放射線科

基本概要

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再診日 月-金
ご連絡先 092-642-5705
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研究

放射線科での代表的な臨床研究を紹介します。
 

神経領域:

新しいMR分子イメージングであるCESTイメージングの臨床応用に取り組んでいます。神経膠腫の悪性度評価、治療後モニタリング、放射線壊死と再発との鑑別、長期予後予測における有用性を検討しています。また、腕神経叢など末梢神経を描出するための新たなMRI画像法として、3D-SHINKEIというシークエンスの開発に取り組んでいます。従来の方法に比べて血管や筋肉の信号を抑制しよりよい神経の描出が得られます。ASLを用いた非造影のMR Angiography法を開発し、脳動静脈奇形やもやもや病での有用性を検討しています。
 

胸部領域:

CESTイメージングの臨床応用に取り組んでいます。これは低濃度の化合物をプロトン交換によるバルク水の信号変化を通して、間接的に高感度に測定する新たな分子イメージング法です。骨軟部、頭頚部、乳腺領域への応用を目指し、主に腫瘍の鑑別、悪性度診断、治療効果予測における有用性の研究を行っています。これまでに軟部腫瘍、耳下腺腫瘍での有用性を報告しています。
 

循環器領域:

1)CT・MRIの心臓領域への新たな臨床応用の開発: 心臓を含め循環器領域は、現在もっとも画像診断機器の臨床応用が進んでいる分野です。心臓の動きを描出することで、機能を評価したり、弁逆流率を算出したり、心筋の性状を評価することで、今後のリスク評価までできるようになっています。当院では主に、肺高血圧や成人先天性心疾患の患者さんを対象に、従来のカテーテル検査に変わりうるような、非侵襲的な診断法の開発に取り組んでいます。
2) MRIを用いた非侵襲的治療効果判定法の開発: 心臓の検査にはこれまで、エコー検査と心臓カテーテル検査が大きな役割を果たしてきました。心臓MRIはエコーが苦手とする右心室や複雑な形態の心臓の評価が可能で、血流量や逆流率を計測することもできる優れたモダリティです。当院では主に肺高血圧や成人先天性心疾患の患者さんを対象に従来のカテーテル検査に変わりうるような非侵襲的な診断法の開発に取り組んでいます。
 

腹部領域:

CESTイメージングの一種であるAPTイメージングの臨床応用に取り組んでいます。APTイメージングはタンパク量を推定可能なMRI撮像法です。当科では、骨盤領域の悪性腫瘍の診断に応用し、これまで前立腺がん、直腸がんや子宮体がんの細胞悪性度診断、直腸がんの化学療法の効果予測、内容液から見た卵巣嚢胞の鑑別などに有用であることを報告しています。
 

IVR領域:

1)腎細胞がん(4cm以下)に対する凍結療法の有効性と安全性の解析:当院では2014年より約150例(2018年4月現在)を診療実績があります。成績は得られていませんが、短期成績は良好で、Grade3以上の合併症も3%程度です。腎機能低下も約5%に抑えられ、低侵襲治療としてきわめて有効であると考えられました。
2)胸腹部大動脈瘤治療後のタイプ2エンドリークに対するCTガイド下経皮的直接穿刺の有効性と安全性の解析:大動脈瘤治療後に生じたエンドリークには、経血管的治療が標準治療ですが、当科では積極的に、CTガイド下での経皮的直接穿刺を行っています。臨床的成功率は90%以上、Grade3以上の合併症はなく有効な治療法です。
 

消化管領域:

1)胃がんは、病理組織学的に多彩な因子を有し、これらにより治療法や予後が大きく影響します。当施設に導入されている320列面検出CTは、灌流の評価や従来のCT以上の多相撮影による評価ができます。また我々が開発したWall-carving仮想展開像は、手術標本と完全な対比が可能です。これらの手法を用いて胃がんの病理学的因子と画像所見との関連を正確かつ客観的に評価・検討し、胃がんの多様性の診断に関する研究を行っています。
2)食道がんは、予後不良であり、その多くが、化学療法や放射線化学療法の適応となります。治療効果判定は主に画像によるサイズの変化で評価されるため正確とはいい難いです。当施設に導入されている320列面検出 CTは、ヨード強調画像を用いて腫瘍組織内の血流や間質を評価することが可能です。この手法を用いて、食道がんの放射線・化学療法に対する治療効果を予測する、新たな指標を確立するべく研究を行っています。

教育

(1)初期研修

初期研修で放射線科を研修する場合には、神経、胸部、腹部・IVR、消化管、核医学、放射線治療の6つのグループをローテートし、画像診断や放射線治療の基本を学びます。各グループにて、画像診断、検査手技、治療計画などを実際に経験して、基本的なレベルの放射線科診療を身につけます。当科では以下の研修目標が達成できるように教育を行います。
  1. 単純X線写真、CT、MRI、血管造影、超音波、消化管造影検査、消化管内視鏡検査、核医学検査を実行し、
    自ら結果を解釈、検査結果報告書を作成できる。
  2. 放射線科領域における高頻度疾患について、診断法、治療法、予後を述べることができる。
  3. 放射線治療、化学療法、インターベンショナルラジオロジーについて、適応を判断し、自ら実施、結果を正しく評価できる。
 

(2)後期研修

当科入局後の後期研修の3年間(卒後3-5年目)は放射線科医として全般的な放射線診断学、放射線腫瘍学、放射線生物・物理学の基本的知識や技術を習得する事を目標とします。この期間は総合修練機関を必ず含めて1年単位でローテートを行い、不足している領域を補完できるように研修します。幅広い放射線領域の知識や技術を身につけるためには、研修という側面においても、大学医局と関連施設との有機的な連携を行っています。
当科では専門医研修ノートに研修内容を記録することで、自身の到達度を客観的に評価できるようにしています。毎週月曜日夜には後期研修医向けの勉強会(当科医局にて開催)に参加し、専門医試験に向けての勉強を行います。個人の到達度を明らかにした上で、医局長、教授との面談を毎年行って、次の研修先を協議します。そして卒後6年目に放射線科専門医試験を受験し、専門医資格を取得します。
 

(3) 専門医研修(入局4-6年目)

専門医研修3年間(卒後6-8年目)はそれまでと同様に研修を続けますが、若干期間が長くなり1-2年でのローテーションになります。その際に将来のコースとして、診断医・治療医を選択し、それぞれの選択に応じたローテート先へ赴任します。卒後8年目で専門医試験を受験し、診断専門医あるいは治療専門医の資格を取得します。学位取得を希望する場合には、基礎ないし臨床大学院に進学できます。臨床大学院では臨床研究を行いつつ、より専門的な放射線診断学・IVR・核医学、治療の知識についての研修を受けることができ、放射線診断専門医・治療専門医を取得できます。