胸部領域 肺 内視鏡外科手術

2018年11月1日

胸部領域

肺がん、自然気胸

呼吸器外科(2)併任講師  田川 哲三

胸部領域の内視鏡手術について、
呼吸器外科(2) 田川 哲三併任講師が回答します。 

呼吸器領域の内視鏡手術は、いつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例数がありますか?


表 1 内視鏡手術術式内訳(2017年 1月―12月)
まず呼吸器外科とは胸の中で心臓・大血管、食道を除くすべての臓器(気管支・肺、縦隔など)を対象とし、疾患も原発性肺がんをはじめ転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸壁腫瘍、自然気胸など多岐にわたり、それぞれ手術で切除する部位、範囲およびそのアプローチ法が異なります。

呼吸器領域の内視鏡手術である胸腔鏡を用いた手術は、当科では1992年から自然気胸の手術(肺のう胞切除)や胸膜病変の組織検査(生検)に用い始めました。 その後、自動縫合器や超音波メスなど内視鏡用器機の導入に伴い縦隔腫瘍や肺がんの手術にも適用するようになりました。現在では、年間約240例の呼吸器外科手術症例の半数以上は完全胸腔鏡下、あるいは胸腔鏡補助下で行っています。

手術の適応についてお聞かせください


表 2 手術対象疾患(通常の手術、内視鏡手術含む)(2017年 1月ー12月)
上記のように、胸腔鏡手術の適応は疾患と開胸創との併用の有無で異なり、一概には言えません。

自然気胸や早期の肺がん、肺の腫瘍性疾患で肺部分切除の適応となる場合(良性腫瘍や転移性肺腫瘍など)、ほぼ完全な鏡視下手術で行っています。また、縦隔腫瘍で腫瘍径が小さい場合( 3cm以下程度)も多くは完全な鏡視下手術で行っています(完全胸腔鏡下手術)。

一方、進行期の肺がんに対する手術では、肺門血管操作(心臓から直接出る血管を処理すること)が必要なため安全性を重視して、開胸創を主体にして胸腔鏡は補助的に用いて行います(胸腔鏡補助下手術)。

一般的な術後の経過は、いかがでしょうか

完全胸腔鏡視下手術で平均在院日数は 3-7日です。胸腔鏡補助下手術の術後の平均在院日数は約10日です。

ただ術後の経過は、創部の大きさよりも肺切除の範囲(部分切除か、肺葉切除か、あるいは片肺全摘出)とそれに伴う術後の胸腔ドレーン(管)の留置期間によります。

また胸部の手術では、肋骨に沿って切開するため創の大きさに関わらず肋間神経による痛みが、術後の経過に影響します。

手術創と手術後の経過はどのようになりますか?

完全胸腔鏡視下手術では、約 1-2cmの創切開を 3、4か所行います(写真 1)。そのうち、肺を取り出すために 1つの創は 3-5cmに広げます。病変部が視覚的に確認できない場合も、 3-5cm程度の小さな開胸創を追加し術者の手で触知確認し切除します。

胸腔鏡補助下の手術では、約10cmの開胸創を主体にして 1cm程度の創より胸腔鏡や器具を挿入して補助的に用います(写真 2)。

  • 写真 1 胸腔鏡単独の手術

  • 写真 2 開胸創に胸腔鏡を補助的に用いる手術

おもなメリットは何でしょうか

胸腔は肋骨で囲まれた固い空間であり、 1か所で開胸してもすべての部位に到達できるわけではありません。

たとえば古い肋膜炎などで肺と胸壁が広範に癒着している例では、癒着を剥離するために 2か所で開胸を要する場合もありますが、胸腔鏡の導入により追加開胸を回避できるようになりました。

また、手術の始めにまず胸腔鏡で観察することにより、「最適の部位」に「最適の大きさ」の開胸創を行い「最適の視野」で手術ができるようになったことが最大のメリットです。

さらに、縦隔や胸壁の病変で胸腔内の部位によっては、胸腔鏡下で手術を行う方が適している場合もあります。

現在の取り組みについてお聞かせください

近年CT検診の普及により小さな肺病変が発見される機会が増加し、その診断・治療には胸腔鏡手術がよい適応とされています。

しかし、小さいが故に手術中に胸腔鏡による鏡視下観察では小型病変の同定が困難な場合も多く、小さな開胸をして実際に触診を要しているのが現状です。現在こうした小型病変の術中同定法を開発中です。

内視鏡手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています

呼吸器外科(2)外来までお気軽にお問合せください(TEL:092-642-5479 初診日・再診日:月・水・金)。
九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科
http://www.kyudai2geka.com/