胸部領域 胸腺、縦隔 内視鏡外科手術

胸部領域

胸腺、縦隔

縦隔腫瘍:胸腺腫

呼吸器外科(1)助教 三好 圭

縦隔領域:胸腺腫の内視鏡手術について、
呼吸器外科(1) 三好 圭助教が回答します。 

縦隔領域での内視鏡手術は、いつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例数がありますか?


表1 縦隔腫瘍症例数(胸骨正中切開:* 肺浸潤、** 無名静脈浸潤)
当科では平成10年から本格的に縦隔腫瘍に対して内視鏡手術に取り組み、これまでに90名以上の患者さんに手術を行いました。平成18年から平成24年の7年間に施行した鏡視下縦隔腫瘍摘出術40例の内訳を、表1に示します。

手術の適応についてお聞かせください。

前縦隔に存在する5cm以下の、周囲臓器に浸潤のない縦隔腫瘍を対象にしています。胸腺腫が多くを占めます。

ただし、術中の不慮の出血などで安全な手術の遂行が困難と判断した場合や、腫瘍の周囲臓器(特に血管)への浸潤があれば、通常通りの胸骨正中切開を行い、安全に手術を行うようにしています。

どのようにして手術を行いますか?


写真1 手術野外貌
写真1で示すように、ラパロリフトという器械を用いて胸骨を裏面から挙上します。5cmの創に創縁保護の器具を装着し、同部位から鉗子による手術操作を行います。その尾側の1.5cmの創からスコープを挿入します。スコープからの映像をみながら手術操作を行います。

一般的な術後の経過は、いかがでしょうか。

鏡視下手術の場合、ドレーンを抜去後(術後翌日から2、3日目)から入浴が可能となり、およそ5日で退院となります。通常の胸骨正中切開による手術では術後一週間ごろ抜糸を行い、10日前後で退院になります。鏡視下手術では早期退院が可能です。

手術創はどのようになりますか?

手術後の外貌を写真2、3に示します。写真2は鏡視下手術の創で、約5cmの傷とその下に1cmのスコープ挿入のための創があります。写真3は通常の胸骨縦切開の手術創の写真です。鏡視下手術では胸骨を切開せず、手術創もかなり小さくなります。

  • 写真2 鏡視下手術

  • 写真3 従来法(胸骨正中切開)

おもなメリットは何でしょうか。

美容上のメリットはもちろんですが、術後の疼痛が大幅に軽減します。また、回復が早いため、入院期間もかなり短縮します。

通常手術と比べて術後成績はいかがですか?

胸腺腫のType B2-B3・C 症例には術後放射線照射を追加して行っています。予後は比較的良好で過去5年間の症例に死亡例はなく、完全切除されたTypeA・AB・B1 胸腺腫症例は全例無再発生存中です。従来の胸骨正中切開による手術成績と、遜色ない成績といえます。

現在の取り組みについてお聞かせください。

重症筋無力症を合併した胸腺腫では、鏡視下拡大胸腺全摘を含めた胸腺腫摘出を行っています。前縦隔の周囲臓器浸潤を伴わない腫瘍に関しては、たいへん有用な手技と考えています。

腫瘍径が大きくなると縦隔内のワーキングスペースが狭くなり、手術操作が制限されます。今後はこのような場面でも安全に鏡視下操作が行えるように、技術面での検討を進めていきます。

内視鏡手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています

呼吸器外科(1)外来までお気軽にお問合せ下さい(TEL:092-642-5453 初診日・再診日:火・木)。
九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/surgery1/