消化器領域 肝臓 内視鏡外科手術

2018年11月1日

消化器領域

肝臓

肝のう胞・肝血管腫・肝細胞がん

肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科 准教授 吉住 朋晴

消化器領域:肝臓の内視鏡手術について、
肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科 吉住 朋晴准教授が回答します。 

肝臓の内視鏡手術はいつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例がありますか?

わが国では、1991年に肝のう胞に対する腹腔鏡手術が初めて報告されています。1992年には肝細胞がんに対する腹腔鏡手術が行われ、以後急速に症例数が増加しています。当科では1994年から腹腔鏡下肝臓手術を開始し、2018年 8月までに270例の腹腔鏡下肝臓手術を行ってきました。表 1に腹腔鏡下肝臓手術の疾患内訳を示します。また、図 1に最近の肝切除術における腹腔鏡手術数の推移を示します。

  • 表 1 腹腔鏡下肝臓手術疾患内訳

  • 図 1 開腹・腹腔鏡下肝切除術年度別症例数(1994年-2018年 8月31日)

どのような患者さんが手術の適応になりますか?


表 2 腹腔鏡下肝臓手術一覧
2010年から肝外側区域切除と肝部分切除が保険適用となりました。さらに、2016年からは肝臓切除のほぼすべての術式が保険適用となりました。疾患では、肝のう胞・肝血管腫などの良性疾患、さらに肝細胞がんなどの悪性疾患が適応となります。表 2に当科でこれまでに行ってきた腹腔鏡下肝臓手術の一覧を示します。肝機能・腫瘍の場所などを考えながら、術式を決定しています。

一般的な術後の経過についてお聞かせください

当科での腹腔鏡下肝切除では、通常クリティカルパスを用いています。手術は全身麻酔で行いますが、手術の翌日にはお腹に入っている管(ドレーン)を抜去し、水分・食事摂取が可能です。傷が小さいので、術後の痛みは少ないというメリットがあります。肝切除の術式・切除する肝臓の大きさにもよりますが、術後 5-7日で退院可能です。

手術創はどのようになりますか?

肝臓の開腹手術を安全に行うには、お腹に大きな傷を開ける必要があります。腹腔鏡手術では、 5mmから12mmの穴を 5-6か所に開けて手術を行うことが可能です。腹腔鏡で肝切除を行った時の傷(写真 1)、従来の開腹手術で肝切除を行った場合の傷(写真 2)を示します。

  • 写真 1  5mm-12mmの穴を 5-6か所に開けて行う腹腔鏡手術

  • 写真 2 従来の開腹手術で肝切除を行った場合の傷

この手術のおもなメリットは何ですか?

腹腔鏡手術に用いる手術器具の改良や術式の工夫により、腹腔鏡下手術でも、開腹手術とほぼ同じ手術を行うことが可能となってきました。腹腔鏡による拡大視効果や気腹による止血効果により、術中出血量は開腹手術と同等か、より少ないとする報告もあります。また、従来の傷ではお腹の筋肉(腹筋)を大きく損傷せざるをえませんが、腹腔鏡手術では筋肉の損傷が少ないため、術後の回復も早くなります。

現在の取り組みについてお聞かせください

当科では、腹腔鏡下肝切除術にいち早く取り組んできました。その後の手術時の体位・手術器具などのさまざまな工夫により、現在では肝切除術の半数以上を腹腔鏡で行っています。当科は、わが国の肝移植施設で最も多くの肝移植を行っています。将来、生体肝移植ドナー手術が保険適用になった際にも、ただちに対応できるよう、準備を進めています。

内視鏡手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています

肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科外来までお気軽にお問合せください(TEL:092-642-5479 初診日・再診日:月・水・金)。
九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科
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