整形外科領域 下肢 内視鏡外科手術

2024年4月1日

整形外科領域

下肢

膝・股・足関節

整形外科 講師濵井 敏

整形外科:下肢(膝・股・足関節)領域の内視鏡(関節鏡)手術について、
整形外科 濵井 敏 講師が回答します。

膝関節外科領域での内視鏡手術は、いつ頃から始まりましたか。どのくらいの症例数がありますか?

膝関節鏡の歴史は古く、1918年に東京帝国大学の高木憲次先生らが世界で初めて行って以来、日本で開発されてきました。東京逓信病院の渡辺正毅先生らが1960年頃(昭和30年代)に手術法としての関節鏡を広めていき、1970年以降に少しずつ世界中に広まりはじめました。九州大学では1975年頃(昭和50年代)から行われ、後十字靱帯再建術や高位脛骨骨切り術などでは手術法の開発において、わが国をリードしてきました。現在も靱帯再建や半月板切除・縫合など、毎年60-80例ほど行っています。
 
部位 術式 症例数
膝関節 靱帯再建術 24
半月板縫合術 11
半月板切除術 3
その他(滑膜切除・ドリリングなど) 10
 表1 関節鏡手術術式内訳(2021年4月-2022年3月)

手術の適応についてお聞かせください

膝関節:
代表的な傷病は膝十字靱帯損傷に対する靱帯再建術、半月板損傷に対する切除術や縫合術、遊離体や滑膜炎の切除、軟骨損傷の修復術、関節内骨折の骨接合術などです。これらはほとんどの場合、関節鏡手術で行います。

股関節:
股関節唇損傷、FAI (femoroacetabular impingement)に対して、関節鏡を用いた治療 (関節唇縫合術、関節唇部分切除術、骨隆起切除術)を行っています。

足関節:
足関節外側靭帯損傷や、三角骨傷害、距骨骨軟骨傷害といったスポーツ活動に多い足部の疾患に対しては、早期のスポーツ復帰を考慮して、関節鏡を用いた治療を積極的に行っています。
手術による侵襲が少なく、また術後の痛みが軽いため、入院期間も短くなります。
 
手術法 手術件数
下肢 人工関節(骨頭)置換術(外傷を除く) 172
304
2
関節鏡視下手術 48
0
3
関節形成(骨切り等) 73
神経、筋腱 4
その他 147
 表2 手術対象疾患(通常の手術、関節鏡手術含む)(2021年4月-2022年3月)

一般的な術後の経過は、いかがでしょうか

回復が早く、術後早期に動くことができます。歩行開始時期は病状によってさまざまですが、術直後から歩行できることも多いです。スポーツによる靱帯損傷や半月損傷では、最終的には受傷前のスポーツ復帰が可能となることがほとんどです。

手術創はどのようになりますか?また、どのようなことが心配されますか

創は 1cm程度の 2-3か所用いることが多いです。

スポーツ外傷の患者さんは「元通りにスポーツができるか」「いつごろスポーツに復帰できるか」ということを特に心配されます。当科でのスポーツ復帰率は90パーセント以上です。ただし、スポーツ復帰時期は、前十字靱帯再建では 8-10か月は待ってもらうようにしています。早すぎる復帰の後にもう一度ケガをする再受傷が起こりうるからです。

おもなメリットは何でしょうか

関節機能を低下させずに、早い復帰ができることです。手術部位を拡大して見ることが出来るので、正確な手術ができます。

現在の取り組みについてお聞かせください

前十字靱帯再建術では、正常の靱帯と同じ状態を再現できるように、つねに最新・最良の手術方法を取り入れています。よりよい手術方法と治療成績を研究し、世界に発信しつつ、その成果を次の患者さんの手術に活かして還元しています。半月板損傷は可能な限り縫合による修復を行い、切除は最小限にとどめるようにしています。軟骨がすり減る変形性関節症に対しては、早い時期に骨切り術によるO脚矯正を行うことで、生涯自分の膝で歩けることを目指しています。

また、関節鏡手術は整形外科での標準的な手術法で、安全で身体に優しく正確な手術ができる方法です。しかし、変形が進行した膝関節に対しては関節鏡手術では対処できないこともあり、他の手術法を検討します。医師から十分に話を聞いて治療を受けてください。

前十字靱帯断裂に対する関節鏡による手術画像
前十字靱帯断裂に対する関節鏡による手術画像

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九州大学大学院医学研究院整形外科学
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