婦人科領域 卵巣・卵管・子宮 内視鏡外科手術
産婦人科領域
卵巣・卵管・子宮
卵巣腫瘍、卵管、子宮筋腫、子宮体癌
産科婦人科 准教授矢幡 秀昭
婦人科領域(卵巣、子宮)の内視鏡手術について、
産科婦人科 矢幡 秀昭准教授が回答します。
婦人科領域での内視鏡手術はいつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例数がありますか?
手術の適応についてお聞かせください
卵巣の嚢胞状(内部に液体などが入っている袋状)の腫瘍で良性を疑うものに関しては、ほぼすべての症例で腹腔鏡手術を行うことができます。たいへん癒着が強い場合や、固形の卵巣腫瘍で細かく切らないと小さな傷から出せないような場合、悪性の卵巣腫瘍を疑う場合などは開腹手術になります。
子宮筋腫に対する子宮筋腫核出術や子宮全摘出術は、子宮や筋腫の大きさによっては腹腔鏡下手術が可能です。
2014年から初期の子宮体癌に対する手術が、2018年から初期の子宮頸がんに対する手術(腹腔鏡下広汎子宮全摘出術)が認定施設では保険で行えるようになりました。また、2020年4月からは、やや進行した子宮体癌の患者さんで傍大動脈リンパ節郭清(臍部より上のリンパ節を取るので開腹手術では大きな傷になります)を保険診療として行っています。2019年までに腹腔鏡下子宮体癌根治術(含むロボット支援ロボット支援下手術)を約150例、腹腔鏡下子宮頸がん手術(腹腔鏡下広汎子宮全摘出術)を約40例行っています。
一般的な術後の経過は、いかがでしょうか
悪性の手術などでやや回復に時間がかかる場合もありますが、ほとんどの症例で手術翌日から食事を開始し、トイレなどへ歩行可能になります。良性の手術の場合、退院は手術後 4日目から 7日目くらいですが、悪性の手術の場合は10日程度かかる場合もあります。退院前に痛み止めが全く必要なくなる方も多数おられます。
手術創はどのようになりますか
多くの腹腔鏡手術の場合、傷は 3-5か所になります。 1か所はおへその中を切るのでほとんど見えません。また、その他の傷の長さも 6-7㎜程度であまり目立ちません。
内視鏡手術のおもなメリットは何でしょうか
女性を診る科ですので、とくに若い方では傷が小さいことで美容上のメリットがあります。また術後の痛みが少なく早期に自分で歩くことができますので、血栓症や麻痺性の腸閉塞などの術後合併症が少なくなる可能性もありますし、入院期間が短くてすみます。
一般的に腹部の手術をすると、お腹のなかで癒着(お腹の壁や腸などがくっついてしまうこと)が起こります。癒着の起こりやすさなどには個人差があります。腹腔鏡手術は開腹手術に比べてお腹の中の癒着を起しにくいため、腸の癒着による腸閉塞や、子宮・卵巣・卵管周囲の癒着による不妊症などを起こしにくいというメリットもあります。
現在の取り組みについてお聞かせください
患者さんからの問い合わせで多いものは何でしょうか?
入院期間は手術にもよりますが、開腹手術と比べると数日から1週間程度短くて済むことが多いです。
退院後の抜糸を気にされる方がいますが、お腹の中も、皮膚の部分も吸収糸(溶ける糸)だけを使いますので、術後の抜糸は必要ありません。
退院後の食生活は、婦人科臓器の手術だけであればとくに制限はありません。
自宅に帰ってからも安静にする必要はなく、通常の日常生活が可能になります。
腹腔鏡以外の内視鏡手術についてお聞かせください。
腹腔鏡以外にも子宮の手術では腟からカメラを入れてまったくお腹を切らない子宮鏡手術もあります。ただし適用できるのは子宮内腔にできた腫瘍や筋腫などに限られます。また、厳密には内視鏡手術ではありませんが、とくに原因となる腫瘍などがない(機能性)過多月経の方に対して、マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)という子宮の中に棒を入れて内部を焼灼するような手術もあり、痛みや出血もたいへん少なく翌日の退院も可能になります。