消化器領域 膵臓 内視鏡外科手術

消化器領域

膵臓

良性・悪性疾患

胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科 准教授 大塚 隆生

消化器領域:膵臓の内視鏡手術について、
胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科 大塚 隆生准教授が回答します。 

膵臓領域での内視鏡手術は、いつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例数がありますか?

膵臓疾患に対する腹腔鏡手技は、膵臓の切除(膵尾部切除・局所切除)は1996年頃から報告されています。当科でも1998年には第一例目が行われ、2017年12月までに246例の腹腔鏡下の膵臓手術を行ってきました。表1に腹腔鏡下膵切除術の内訳を示します。また図1に膵臓周囲の解剖図、図2に腹腔鏡下膵切除術の術中写真を示します。

  • 表1 腹腔鏡下膵手術実績(2017.12月現在)

    表1 腹腔鏡下膵手術実績(2017.12月現在)

  • 図1 膵周囲の解剖

    図1 膵周囲の解剖

  • 図2 自動縫合器での膵切離

    図2 自動縫合器での膵切離

手術の適応疾患についてお聞かせください。

表2 腹腔鏡下膵手術対象疾患(2017.12月現在)
表2 腹腔鏡下膵手術対象疾患(2017.12月現在)
膵臓領域の内視鏡手術は膵臓の良性、または悪性度の低い疾患に対する手術として、わが国では開始されました。その後技術の進歩や安全性の検討により、次第に手術の適用が拡大され、現在は、良・悪性腫瘍に対する腹腔鏡下尾側膵切除術、良性から低悪性度腫瘍に対する腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術と膵腫瘍核出術が保険診療として認められています。その他の手術については本院倫理委員会の承認の下、自費診療等で行っています。現在までに当科で行った腹腔鏡下膵切除術の術前診断一覧を表2に示します。

一般的な術後の経過は、いかがでしょうか。

膵切除の術後経過は、残った膵臓から消化液が漏れる膵液瘻(すいえきろう)という合併症の有無により大きく左右されます。現在世界的に広く普及している腹腔鏡下膵体尾部切除術では開腹手術と比較して、術後膵液瘻を含めた合併症の頻度が低く、術後在院日数が短くなることが分かっています。また創が小さく、痛みも少なくなります。

手術創はどのようになりますか?

図3は完全鏡視下で行った膵手術の場合は、5mm とl2mm の計4-5か所の創で手術を行います。取り出す腫瘍が大きい場合や、脾臓含併切除の場合は、臍部の創を3-4cmに延長することもありますが、臍の創は縮むため最終的には目立たなくなります。図4は従来の開腹膵手術による創です。
一方、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術や膵中央切除術では、膵再建を安全に行うために4-7cmの小開腹創をおいています(図5)。

  • 図3 完全鏡視下で行った膵手術の創

    図3 完全鏡視下で行った膵手術の創

  • 図4 従来の開腹手術の創

    図4 従来の開腹手術の創

  • 図5 小開腹手術を併用した場合の創

    図5 小開腹手術を併用した場合の創

現在の取り組みについてお聞かせください。

腹腔鏡下膵切除の対象となる疾患では、病態的には脾臓の温存が可能な場含がありますが、技術的に困難とされ、あまり行われてきませんでした。当科では、膵臓の解剖学的知見に基づいた確実性の高い脾臓温存術式を考案・実践し、現在では腹腔鏡下膵体尾部切除術の半数以上を脾臓温存術式で実施しています。

また当科は国内最多の膵臓腎臓移植施設であり、生体膵腎移植のドナ一手術(膵・腎摘出術)も2010年から腹腔鏡補助下で開始しました。

より高度な技術を必要とし、腹腔鏡下では困難とされた膵中央切除や、膵頭十二指腸切除もすでに開始し、これまでの国内有数の経験を生かし、今後は膵がんなどの悪性疾患に対しての適応拡大を慎重に検討しています。

内視鏡手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています

胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科外来までお気軽にお問合せ下さい(TEL:092-642-5453 初診日・再診日:火・木)。
九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科学
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/surgery1/