消化器領域 膵臓 内視鏡外科手術
消化器領域
膵臓
良性・悪性疾患
膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科 教授 中村 雅史
消化器領域:膵臓の内視鏡手術について、
膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科 中村 雅史教授が回答します。
膵臓領域での内視鏡手術は、いつ頃から始まりましたか?どのくらいの症例数がありますか?
我が国での膵臓疾患に対する腹腔鏡手技(膵臓の切除(膵尾部切除・局所切除))は1996年頃から報告されています。当科でも1998年には第一例目が行われ、2022年12月までに372例の腹腔鏡下の膵臓手術を行ってきました。また、2020年からはロボット支援下膵切除術も保険収載され、当科では2022年12月までに96例の手術実績があります。表1に腹腔鏡下、表2にロボット支援下膵切除術の内訳を示します。膵臓周囲は動静脈などの血管が、交差しており複雑な解剖関係が見られますが、内視鏡手術は安全に施行できていると考えています。
図1に膵臓周囲の解剖図、図2に腹腔鏡下膵切除術、図3にロボット支援下膵切除の術中写真を示します。
手術の適応疾患についてお聞かせください
一般的な術後の経過は、いかがでしょうか
内視鏡手術は創が小さく、痛みも少ないと言われています。腹腔鏡下膵切除術は開腹での手術に比べて入院期間が短縮し、術後合併症、長期予後は同等であると言われています。また、ロボット支援下膵切除術の短期成績は腹腔鏡下膵切除術と同等であるとする報告が多く、侵襲度に関してはロボット支援下膵切除術でより低い可能性があると報告されています。
手術創はどのようになりますか?
図4は完全鏡視下(腹腔鏡下あるいはロボット支援下)で行った膵手術の場合で、5mmと12mmの計 4-6か所の創で手術を行います。取り出す腫瘍が大きい場合や、脾臓合併切除、膵頭十二指腸切除の場合は、切除した標本を摘出するため創を延長しますが、臍の創の場合は縮むため最終的には目立たなくなります。図5は従来の開腹膵手術による創です。
現在の取り組みについてお聞かせください
腹腔鏡下膵切除の対象となる疾患では、病態的には脾臓の温存が可能な場合がありますが、技術的に困難とされ、あまり行われてきませんでした。当科では、膵臓の解剖学的知見に基づいた確実性の高い脾臓温存術式を考案・実践し、腹腔鏡下あるいはロボット支援下で積極的に脾臓温存術式を実施しています。
また当科は国内最多の膵臓腎臓移植施設であり、生体膵腎移植のドナ一手術(膵・腎摘出術)も2010年から腹腔鏡補助下で開始しました。
ロボット支援下膵切除術に関しても当科では全国に先駆けて2018年から臨床試験下に開始しており、保険収載となった現在も積極的に行っています。その症例数は着実に増加しています