消化器領域 胃 内視鏡外科手術

2021年4月1日

消化器領域

胃がん、食道胃接合部がん、胃GIST等

  • 消化管外科 診療准教授 大内田 研宙

  • 消化管外科 診療准教授 沖 英次

消化管外科における胃を対象とした内視鏡外科手術

当消化管外科では、1991年に世界で初めて胃がんに対して胃部分切除術を行いました。世界で内視鏡外科手術(腹腔鏡下手術)が黎明期であった1990年代後半から胃癌に対しても積極的に腹腔鏡下手術を行っています。2000年には手術支援ロボット、ダヴィンチを使った胃切除術も行っています。胃がんの手術は周囲リンパ節を含めて胃を切除するのが標準的です。開始当初は早期胃がんの患者さんに限って行っていました。しかし最近では、より広範囲な切除が必要な進行胃がんの患者さんにも行っています。2010年からはおおむね全ての胃がんの患者さんが腹腔鏡下手術の対象となりました。一方、進行した胃がんにより食事摂取が不可能となった患者さんには、新たな食事の通り道を作成するバイパス術(胃-空腸バイパス術)も腹腔鏡で行っています。
腹腔鏡下手術 術式内訳
部位 術式内訳 通常鏡視下 ロボット手術 LECS
腹腔鏡下幽門側胃切除術  61  
腹腔鏡下胃全摘術 16  
腹腔鏡下胃部分切除術 28   15
腹腔鏡下噴門側胃切除術 24  
腹腔鏡下残胃全摘術    
腹腔鏡下胃空腸バイパス術    
十二指腸 腹腔鏡下十二指腸部分切除術  
その他 審査腹腔鏡 21    
※LECS・・・内視鏡腹腔鏡協同手術      (2019年1月~2019年12月)
腹腔鏡下手術 疾患内訳(通常の手術、内視鏡手術を含む)
部位 疾患名 症例数
がん 112
消化管間質腫瘍(GIST) 30
神経内分泌腫瘍(NET)
十二指腸 穿孔
消化管間質腫瘍(GIST)
                       (2019年1月~2019年12月)

最先端外科治療の早期導入

3D内視鏡やより高度な手術が可能となるロボットを用いた手術をいち早く取り入れるなど、新しい胃がんの手術法や機器の開発を積極的に行ってきました。手術支援ロボットを使用したロボット支援下手術は胃がんを対象としてすでに2018年度より保険収載され、現在では一般的な治療となっています。ロボット支援下手術では3次元画像情報による立体認識の向上と多関節のロボットアームによる自由で直感的な操作性、人間の手ではどうしても発生する手ぶれを補正して安定した手術が可能になり、胃がんに対する手術でも極めて有用です。
   
    図1 ロボット支援下手術の様子   左:患者側           図1 ロボット支援下手術の様子  右:術者側
 

胃に対する内視鏡外科手術(腹腔鏡下手術)の一般的な術後経過

一般的な術後の経過は、手術翌日から歩行、水分摂取を開始します。大きな傷と比べると痛みが少ないので、手術翌日から歩行することも可能です。幽門側胃切除(胃をおよそ 3分の2切除)の患者さんは 2日目から食事を、胃全摘術の患者さんは 3日目から開始してもらいます。少しずつ硬いご飯を食べるようにしてもらい、幽門側胃切除術の患者さん、胃全摘術後の患者さんともに 7日目以降に退院となります。もちろん、肺や心臓に持病のある患者さんや合併症のある患者さんはそれに合わせて入院期間が長くなることもあります。胃の手術後は食事摂取の方法が手術前とは異なりますので、なるべく退院前に食事指導を受けていただきます。
退院後は散歩から始めて自身の体力を考えながら、ゴルフなどの運動を行ってもらえます。一般的に退院後 1-2週間で職場への復帰が可能です。しかし仕事の内容や患者さんの復帰への緊急度によって復帰までの期間は異なってきます。術後なるべく早く術前と同様の生活に戻ってもらうことが、その後の生活の質(QOL)にはとても大切なことです。

胃に対する内視鏡外科手術(腹腔鏡下手術)の長所


図2  手術後の傷
手術創はへそに約 3−4cm程度の創(ここから切除した胃と周囲リンパ節をひとかたまりに取り出します)と、1.2cmの創が 2か所、0.5cmの創が 3か所できます。0.5cmの創は数か月でほとんどわからなくなります(図2)。手術創の大きさ以上に重要な内視鏡外科手術のおもなメリットは、開腹に比べ拡大視野がえられることがあげられます。現在のカメラは解像度が高く、詳細におなかの中を観察できますので、微小な血管や神経などもしっかりと観察して組織を剥離、切離することができるため、より確実な手術が行え、出血量も開腹手術と比べると格段に少なくて済みます。また、腸管を直接手で触りませんので、術後に腸管の麻痺が起きにくいこともメリットです。このため癒着も少なく、腸の蠕動運動の回復が早く、食事を早期に開始できますし、術後の在院日数も短くなり、社会復帰が早くなります。腸閉塞のような手術後の障害も生じにくいとされており、体重の減少が少ないことも知られています。もちろん術後の痛みも軽度です。

今後の取り組み

当科では、日本内視鏡外科学会技術認定取得者を中心に胃外科の専門医が診療にあたっています。胃癌以外では、最近、特に症例が増加しつつあるGISTの治療も積極的に行っています。また、より低侵襲な治療を目指して、消化器内科と協力した内視鏡腹腔鏡協同手術(LECS)も行っています。これからも一層安全・確実・かつ侵襲が少ない最先端の外科手術を多くの方々に提供できるように、日々診療に取り組みます。

内視鏡外科手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています。

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