消化器領域 大腸 内視鏡外科手術

2021年12月1日

消化器領域

大腸

結腸がん、直腸がん等

  • 消化管外科 助教 水内 祐介

  • 消化管外科 診療准教授 沖 英次

消化管外科における下部消化管内視鏡手術

消化管外科では1993年より早期結腸がんを対象に、内視鏡外科手術(腹腔鏡手術)を開始しました。徐々に進行結腸がんや直腸がんにも適応を拡大して、現在では9割以上の患者さんに内視鏡外科(腹腔鏡手術)手術を行っています。直腸癌に対しては、da Vinci Xi(ダ・ヴィンチXi)という手術支援ロボットを使用して、腹腔鏡手術より精度が高いと考えられる手術を行っています。腹腔鏡手術は、「日本内視鏡外科学会技術認定」の専門医資格をもった医師が担当します。
九州大学消化管外科には、実際の手術ビデオで審査される「日本内視鏡外科学会技術認定」の専門資格をもった医師が10名以上在籍しています。また、ロボット支援下手術においても「日本内視鏡外科学会ロボット支援手術プロクター」というロボット手術指導者資格を持つ医師が4名、専門のトレーニングを受けて認定されたロボット支援下手術の術者資格を持つ医師が8名が執刀を担当します。その他に、腺腫や粘膜下腫瘍などの良性小腸大腸腫瘍、虫垂炎・憩室炎・クローン病などの炎症性疾患、大腸全摘が必要な潰瘍性大腸炎や家族性大腸腺腫症などにも腹腔鏡手術を行っています。
手術対象疾患(通常の手術、内視鏡手術含む)
部位 疾患名 症例数
大腸 結腸がん、直腸がん 240
腺腫
憩室疾患
虫垂炎
小腸 腫瘍
大腸・小腸 悪性リンパ腫 15
消化管間質腫瘍(GIST)、カルチノイド 11
その他 腸閉塞 14
ヘルニア
消化管穿孔、急性汎発性腹膜炎 13
その他の腫瘍(肉腫など)
再発腫瘍切除
肛門
クローン病 15
潰瘍性大腸炎
家族性大腸ポリポーシス
合計 365
                  (2019年1月~2019年12月)

腹腔鏡手術の種類

1.大腸癌における腹腔鏡手術
大腸の腹腔鏡手術では、おなかに5カ所の小さなキズを作り、そこから5㎜から12㎜の小さな機器を挿入します。おなかは二酸化炭素を注入し、膨らませてから手術を行います。腹腔鏡を使ってがんを含む大腸やリンパ節を含む腸間膜を剥離、大腸を栄養する血管を切離したのち、臍に作ったキズを3-5cmに延長し、病変を取り出します。

2.単孔式手術
腹腔鏡手術の一つです。おなかのキズを臍の一カ所だけにして手術をする方法です。おなかには臍周囲以外キズが残らないことになります。良性疾患や早期大腸癌が主な対象です。適応についてはご相談ください。

3.ロボット支援下手術
da Vinci Xi(ダ・ヴィンチXi)という先進的な手術支援ロボットで手術を行う方法です。おなかの中に挿入した機器の操作をロボットアームを介して行います。ロボットの操作は、3次元画像を見ながら行う上、ロボットアームは多関節で手ぶれを補正する機能があるため、腹腔鏡手術よりも精緻な手術が可能になると考えられています。現在、大腸領域では直腸癌を対象にロボット支援下手術を施行しています。
図2. ロボット支援手術の様子
ロボット支援下手術の様子
内視鏡手術術式内訳
部位 術式内訳 通常鏡視下 ロボット手術
結腸 腹腔鏡下虫垂切除術  
腹腔鏡下回盲部切除術 31  
腹腔鏡下右半結腸切除術 45  
腹腔鏡下横行結腸切除術 10  
腹腔鏡下左半結腸切除術  
腹腔鏡下S状結腸切除術 20  
直腸 腹腔鏡下高位前方切除術 62
腹腔鏡下低位前方切除術 47 21
腹腔鏡下ハルトマン手術  
腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術 14
小腸 腹腔鏡下小腸部分切除術  
肛門 腹腔鏡下経肛門腫瘍摘出術  
大腸 腹腔鏡下大腸全摘術 15  
その他 イレウス(腸閉塞)解除  
腹腔鏡下ヘルニア根治術  
合計 269 32
                            (2019年1月ー2019年12月)

腹腔鏡手術の適応及びメリット

術後腹部のキズ
術後腹部のキズ
基本的にすべての大腸がん手術が適応となります。以前は、手術歴がある方や進行癌では困難とされていました。しかし機器と技術が発達し、現在は手術歴のある方や、進行癌、ご高齢の方でも行うことができます。現在考えうる除外基準は、10cm以上の腫瘍・大きな他臓器への浸潤・腸閉塞・高度な癒着が予想される開腹歴などです。しかし、そのような場合でも条件によっては腹腔鏡手術が可能なこともありますので是非ご相談ください。
大腸がんの場合、開腹手術であれば手術創は20cm程度になります。一方、一般的な腹腔鏡手術の場合、 5つの小さな創で行います。創の痛みが開腹手術に比べて少ないため、手術後は早期から歩行や飲水が可能です。小さな創は 3か月もすると目立たなくなり、臍部の創も最終的にはおへそが縮んであまり目立たなくなります。
創部が目立たない以外でも多くのメリットがあります。腸管が直接外気に触れないため、腸管の蠕動運動が障害されにくく早期の食事開始が可能です。癒着も少なく、腸閉塞のような手術後の障害も生じにくいとされています。
また我々手術する側にとっても、開腹に比べ手術中の視野がいいことが大きな利点です。現在のカメラは解像度が高く、手術野を拡大して見ることができますので、確実な手術操作が行え、出血量も開腹手術と比べると格段に少なくて済みます。そのため、直腸がんでは性機能や排尿機能に携わる神経の損傷が少なくなり、肛門温存率も増加しました。
 

今後の取り組み

大腸癌、なかでも直腸癌は肛門の温存がネックになることがあります。私たちは、腹腔鏡手術やロボット支援手術の利点を最大限に利用し、肛門温存率をさらに向上させる取り組みを行います。さらに、経肛門内視鏡手術(TaTME)の併用によって、骨盤深部での手術精度を高める工夫や、手術時間を短縮させる取り組みも行っています。
また、大腸がんはときに、肝転移を伴うこともあります。そのような場合でも、私たちは肝胆膵外科と協力して肝臓切除と大腸切除の両方を腹腔鏡で行う取り組みも行っています。
当科では、「日本内視鏡外科学会技術認定」「日本大腸肛門病学会専門医」といった専門医資格取得者を中心に下部消化管外科の診療にあたっています。安全・確実・かつ侵襲が少ない手術を目指して日々診療に取り組んでいます。

内視鏡手術の適応に関するご相談・ご紹介は随時、受け付けています

消化管外科外来までお気軽にお問合せください。
消化管外科 診療案内はコチラ