現在、泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科ではさまざまな臨床研究を行っています。その一部を紹介します。
『尿路上皮がんにおける尿中活性型プロテインキナーゼCα(PKCα)の診断及びバイオマーカーとしての機能評価』
尿路上皮がんはその発生部位から腎盂尿管がん、膀胱がんに分かれます。
がんの早期発見や治療中のがんの状態を推測するために、さまざまな検査法が開発されていますが、いまだに有効な検査法が確立されていない病気も多くあります。尿路上皮から発生する尿路上皮がん(腎盂尿管がん、膀胱がん)もその一つで、患者への負担が軽く簡便な検査法の開発が待たれているところです。
新しいがんマーカーの一種であるプロテインキナーゼCα(PKCα)という酵素は、正常細胞では反応性が低く、尿路上皮がん細胞を含めた多くのがん細胞で反応性が高いことがわかっています。このような反応性が高いものを活性化PKCαと呼びます。この活性型PKCαは、尿路上皮がん細胞から尿の中に放出される可能性が高いと考えられ、尿中の活性型PKCαは新たな尿路上皮がんのバイオマーカーになり得ると考えております。
本研究は、尿路上皮がん患者の尿中活性型PKCαの検出法を確立し、活性型PKCαを尿路上皮癌の新規バイオマーカーとして確立することを目標としています。活性化型PKCαが臨床応用されることが尿路上皮がんの早期発見へつながり、多くの患者さんの利益をもたらすと考えています。
『転移性前立腺癌に対するGnRHアンタゴニスト単剤療法とGnRHアゴニストCAB療法のランダム化比較試験』
前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)の刺激により増殖します。転移性前立腺がんに対する治療は、男性ホルモンを抑制する内分泌療法が主流となり、GnRHアゴニスト製剤と抗アンドロゲン剤の併用療法(CAB療法)がこれまでの標準治療となっていました。
一方2012年10月、日本において精巣での男性ホルモンの生成を抑える別の薬(GnRHアンタゴニスト製剤)「注射用デガレリクス酢酸塩」が発売されました。この薬は、GnRHアゴニスト製剤と単剤同士で比較を行った結果、GnRHアゴニスト製剤に比べて、PSA値が高かった患者さんや転移性前立腺がんの患者さんでは、1年後にPSAが再燃する患者さんの割合が少なかったことが報告されています。しかしながら現在の標準療法であるGnRHアゴニスト製剤のCAB療法と比較を行った結果は報告されていないため、デガレリクスが現在の標準療法と比べてどの程度効果があるのかを検討しています。また参加した患者さんの遺伝子多型(DNA配列の個体差)を同時に解析し、それらが治療の成績にどういった影響を及ぼすかについて解析しています。
この研究は、当科が主導する他施設共同研究で、九州・山口の大学病院とその関連施設が参加しています。
そのほかにも現在進行中の臨床研究が多数あります。詳細については下記リンクをご参照ください(ページ下部にございます)。
https://www.uro.med.kyushu-u.ac.jp/clinical-research/