小児外科、成育外科、小腸移植外科 外科系

基本概要

外来窓口 北棟5F
初診日 月・火・水・金
再診日 月・火・水・金
ご連絡先 092-642-5578
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診療科紹介

小児外科をわかりやすく説明すると「小児の一般外科」です。対象となる臓器は呼吸器・消化器・泌尿生殖器・皮膚軟部組織などです。脳を含む頭部、心大血管、四肢と筋骨格以外のすべての臓器が治療対象となる総合外科で、当科では肝臓・小腸の臓器移植も行っています。対象年齢は基本0才から18歳までです。

主な対象疾患とその治療

小児外科では、ソケイヘルニア、急性虫垂炎、腸重積のような日常疾患から、食道閉鎖、直腸肛門奇形(鎖肛)などの新生児外科疾患、ヒルシュスプルング病類縁疾患、リンパ管腫症のような我が国で100例程度の発症頻度である稀少疾患まで、多種多様な疾患の治療を行います。そのため、治療対象は新生児から、長期にわたり治療を必要とし、成年期に達したトランジション症例までを対象に幅広く行っています。小児固形悪性腫瘍については、小児科と共同して治療に当たっていますが、当院は全国で15箇所が指定を受けている小児がん拠点病院です。

ソケイヘルニア

いわゆる昔の「脱腸」で、主に乳児期にソケイ部(股の付け根のあたり)が膨隆することで発見されます。通常、痛みを伴うことは少ないです。腹圧が上昇する運動後、排便後、涕泣時に出現しやすく、しばらくすると引っ込みますが、ヘルニアの出口の大きさにより出っ放しになることもあります。逆に、完全にはまりこんで、血流障害をきたすと(嵌頓:かんとん)痛みを生じますが、そのままにすると腸管が腐ってしまうため、緊急処置が必要な場合もあります。小学生、中学生になってはじめて診断されることもあります。

診断がつけば、嵌頓の可能性があるため、早期の治療を勧めています。手術が必要であり、当院では男児では主にソケイ部切開によるソケイヘルニア根治術を、女児では腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術を選択しています。どちらも2泊3日の短期入院で全身麻酔下に治療を行います。

急性虫垂炎

急性虫垂炎(いわゆる盲腸)は、小学生、中学生に多くみられますが、3歳くらいの幼児期から発症する場合もあります。幼少児では、上手に痛みを訴えられず、右下腹部痛がはっきりしないこと、胃腸炎にかかることも多く鑑別診断に悩むこと、また炎症の進行が早いことなどにより、症状が進んでから診断される例が少なくありません。

当科では、腹腔鏡手術を第1選択にしています。症状の進み具合により、緊急手術を行う場合と、一旦、抗生剤治療で落ち着かせたのちに数か月後に手術を行う待機的手術(interval appendectomy)を行う場合があります。多くの場合、術後の傷はへそと1-2か所の5mm程度の傷になります。

腸重積症

腸重積症は主に乳幼児にみられ、血便、繰り返す腹痛などでみつかることが多く、腸管の中に別の腸がはまりこんでいる状態です。血流障害をおこすため、急いで戻す(整復)必要があります。多くの症例では、はっきりした原因がなく(特発性)3歳を超えると、ほとんど見られませんが、逆に小学生などで発症した場合は、腸管ポリープなどの原因があることが多いため原因検索を行います。

多くの場合は、肛門から造影剤(もしくは空気)で圧をかけて戻すことができます。それでも戻らない場合は、開腹してはまり込んだ腸管を手で押し戻しますが、戻らない場合は、腸管切除が必要になる場合があります。高圧浣腸で整復できれば1泊2日の観察入院を行います。

胆道閉鎖症

胆道閉鎖症は、胆汁排泄が不良で、出生後の便色が薄くなり、また、黄疸がひかないことで気付く病気です。早期に治療を開始する方が良いため、生後60日までに、根治術を受けることが推奨されています。しかし、病気に気付かないと、肝硬変が進み、脂溶性ビタミン(とくにビタミンK)が不足して血が固まらず、頭蓋内出血から本疾患の診断に至ることがあります。本疾患は小児慢性特定疾患かつ、指定難病です。

まず、胆道閉鎖が疑われた場合は、入院して複数の検査を行い、最終的には手術による胆道造影検査を行い、診断を確定します。そのまま多くの症例では、続けて肝門部空腸吻合術という根治術を行います。術後の胆汁排泄が不十分だと、肝硬変が進み、食道静脈瘤の合併や、肝不全のため肝移植の適応となることもあります。当科では初回根治術から、合併症の治療、肝移植まで、継続して治療を行っています。

先天性横隔膜ヘルニア

先天性横隔膜ヘルニアは、生まれつき横隔膜の形成されないか、不十分で、患側の胸腔内に腸管などの臓器が陥入して肺の成長を妨げ、呼吸不全、循環不全を合併する新生児外科稀少疾患です。多くは出生前に診断され、当院の周産母子センターでの管理となります。当院では北部九州、山口の重症例が集まる地域の中心施設です。本疾患は小児慢性特定疾患かつ、指定難病です。

多くは出生前に診断され、母体管理を総合周産期母子医療センターで行います。出生後には、人工呼吸器を用いて呼吸管理を行い、呼吸循環が安定するのを待ってから、根治術を行います。最重症例では、膜型人工肺(ECMO)を装着します。欠損した横隔膜のサイズにより、自己横隔膜にて欠損孔を閉鎖するか、人工膜(ゴアテックスシート)を用いて閉鎖します。現在ではCDH study groupの一員として、長期予後、合併症についての前方視研究を行っています。

食道閉鎖

食道閉鎖症は、食道が途中で途絶している先天性疾患です。多くの症例で、新生児がミルクを飲めないことで気付くことができていましたが、最近は出生前に診断される症例もあります。哺乳ができず、気道系との交通があると肺炎を起こすため、出生後、早期に手術が必要です。脊椎や心疾患、直腸肛門奇形を合併するような症例もあります。

食道気管瘻(ろう)の切離、食道食道吻合術が必要です。新生児期に一期的に行う場合と、体が大きくなるのを待ち、数回にわけて行う場合があります。食道と食道をつなぐことが難しい場合は、胃を持ちあげて代用食道として使用します。吻合した食道は狭窄しやすいので、食道拡張術を追加で行います。

その他

当科の得意としている分野につきましては、新生児外科、臓器移植、悪性腫瘍、内視鏡外科手術があります。また、全国15か所の小児がん拠点病院の1つであり、外科治療を含めた集学的な小児がん治療を行っています。その他、一般小児外科疾患についても幅広く対応しております。