肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科 外科系

基本概要

外来窓口 外来4F
初診日 月・水・金
再診日 月・水・金
ご連絡先 092-642-5479
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診療科紹介

肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科では、肝臓がんに対する肝切除、末期肝不全に対する肝臓移植、脾腫に対する腹腔鏡下脾臓摘出、食道胃静脈瘤に対する内視鏡的治療を主に行っています。肝切除は年間150例以上、そのうち約65%は腹腔鏡下に行っています。肝移植は年間50例以上を行い、国内有数で救命率は90%以上です。当科は肝疾患における西日本地域最後の砦と考え、日々の診療に取り組んでいます。

主な対象疾患とその治療

肝細胞がん

肝臓から発生するがんを「原発性肝がん」と呼び、この中には、肝細胞から発生する「肝細胞がん」と胆管細胞に由来する「胆管細胞がん」が含まれます。(このふたつ以外のがんは極めてまれです。)

肝細胞がんは、肝硬変や慢性肝炎を背景として発生することがほとんどですが、C型・B型肝炎ウイルス感染者数の減少に伴って、わが国の肝細胞がんの患者数も、減少に向かい始めています。最近の肝細胞がんの患者さんの特徴は、高齢化とC型・B型肝炎ウイルス感染者以外からの発がんです。特に最近注目されているのは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から発生する肝細胞がんです。NASHの多くは、肥満・糖尿病を背景として発症するため、生活習慣病の一つと考えられます。

肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植外科における肝切除総数は、2020年末で3404例となり、全国的にも極めて高い評価を得ています。肝臓は血流の多い臓器で、手術中に大量出血をきたしやすい手術ですが、近年の手術手技の進歩や周術期管理の改善により、極めて安全な治療法となってきました。さらに、2016年4月から、ほぼすべてのがんに対して腹腔鏡下肝切除術が保険適応となりました。九州大学病院では少しでも患者さんに負担の少ない治療をと心がけ、積極的に腹腔鏡手術を取り入れています。現在、肝切除の約65%は腹腔鏡手術で行っています。
肝移植は他に救命できる治療法のない肝細胞がんの患者さんに対する究極の治療法です。2004年よりミラノ基準(3cmまでの大きさなら3個以内、もしくは5cmまでの大きさなら1個のみ)さらに2020年9月より5-5-500基準(がんの大きさ5cmまで、がんの個数5個以内、アルファフェトプロテイン500ng/ml以下)という基準内において、肝がんに対する肝移植は保険適応となりました。

当科では2020年末までに累計259例の肝細胞がんに対する生体肝移植を行い、1年生存率92.1%、3年生存率84.9%、5年生存率82.1%、10年生存率 75.0%というきわめて良好な治療効果をあげています。

慢性肝不全

慢性肝不全になると、黄疸・腹水貯留・肝性脳症・出血傾向・全身のかゆみなどの症状が出現します。また、胃カメラ検査で食道あるいは胃に静脈瘤が見つかることがあります。静脈瘤は破裂すると出血し、吐血の原因となります。肝不全の原因としては、ウイルス性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎・自己免疫性肝炎・アルコール・非アルコール性脂肪肝炎・肝細胞がんなどがあります。薬の内服で治療可能な範囲を超えると、非代償期と呼ばれ、肝移植の適応となります。

肝移植は脳死肝移植と生体肝移植に大きく分けられます。脳死肝移植は、全国のどこかで脳死となった方(脳死ドナー)から肝臓を提供してもらい、移植する手術です。わが国における脳死肝移植認定施設は25施設で、当院は認定施設に選定されています。脳死肝移植を希望の患者さんは、臓器移植ネットワークに登録し、機会を待つことになります。脳死ドナーの数が少ないため、わが国で脳死肝移植を受けることが可能なのは、年間約70人前後です。このため、臓器移植ネットワークへの登録は60歳未満の患者さんに制限しています。一方、生体肝移植は健康な成人のご家族から、肝臓の一部を提供してもらい、肝移植を行う方法です。

当院の年間の肝移植施行数は国内有数であり、移植後の治療経過も全国平均より良好です。慢性肝不全でお悩みの方は、ぜひ当科に相談ください。

急性肝不全

急性肝不全とは、それまで元気に過ごしていた方が、微熱・倦怠感・風邪症状などで発症後に突然肝機能が著明に悪化し、肝性脳症による意識障害などをきたす疾患です。

急性肝不全になると、肝移植以外の内科的治療法での救命率は50%以下です。急性肝不全は、早急な肝移植が必要なため、上記の臓器移植ネットワークに登録すると、慢性肝不全の方よりも、上位に登録されます。脳死肝移植を受けることができれば、症状は劇的に改善します。臓器移植ネットワークに登録しても、肝移植の順番が回ってこない場合、上記の生体肝移植で救命可能です。

その他

肝胆膵外科高度技能指導医3名、肝胆膵外科高度技能専門医1名、消化器外科専門医3名、外科専門医1名の計8名で診療にあたっています(内視鏡外科技術認定医2名を含む)。生体及び脳死肝移植術、(腹腔鏡下)肝切除術、腹腔鏡下脾臓摘出術では、わが国で最高の医療を提供する体制を整えています。