研究と教育 小児外科、成育外科、小腸移植外科

基本概要

外来窓口 北棟5F
初診日 月・火・水・金
再診日 月・火・水・金
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研究

小児の外科的疾患の発症病因、病態生理、診断、治療に関して研究を行う。胎児期から学童期までの広い年齢層にわたる疾患を対象とし、発生原因の究明から分子生物学的解析や再生医療などの新しい治療法の開発まで、臨床材料を用いた研究と培養細胞から大動物を用いた実験的研究まで広く行っている。

基礎的研究は主に大学院教育の中で実施しており、以下のようなテーマを設定している。
(1) 新生児外科疾患の発生病因の解明と胎児治療を含めた新しい治療法の開発。
(2) 小児悪性固形腫瘍の悪性度診断のための分子生物学的解析および難治症例に対する新規治療法の開発。
(3) 小児小腸および肝臓移植の臨床的および実験的研究。
(4) 小児消化管疾患の機能的および形態的解析と治療法の開発。
(5) 小児内視鏡外科手術の工夫と開発。
(6)先天性代謝性疾患および凝固異常に対する肝再生医療の実験的研究。

臨床研究については、厚生労働科学研究費難治性疾患等克服研究事業「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」(平成26年度~)、「小児期から移行期・成人期を包括する希少難治性慢性消化器疾患の医療政策に関する研究」(平成29年度~)を主宰し、現在これを引き継ぐかたちで「難治性小児消化器疾患の医療水準向上および移行期・成人期のQOL向上に関する研究」(令和2年度~)に参加している。
これらの研究成果の一端として『ヒルシュスプルング病類縁疾患診療ガイドライン(2017)』を作成した。
そのほか多数の班研究に参加し、小児悪性腫瘍、難治性肝胆膵疾患、先天性呼吸器疾患、先天性横隔膜ヘルニアなどに対する研究を行っている。
これらの研究成果の一端として『新生児先天性横隔膜ヘルニア(CDH)診療ガイドライン(2016)』を作成した。

教育

九州大学医学部学生に対しては、「受胎、成長、発達」という単元の中で、小児外科疾患の解説を行い、また他学部での小児疾患の授業についても一部を担当している。他大学に比べ、小児外科の担当コマ数は格段に多く、小児外科疾患に対する興味を持ってもらうべく工夫している。

大学院では、小児外科疾患の発生病因、病態生理、診断、治療に関して研究を行う。現在のトピックスとしては、九州大学歯学部小児歯科分野と共同研究を行い、脱落乳歯由来歯髄幹細胞を利用し、小児外科疾患の原因解明、新規治療の開発に向けた研究を大学院生が主体となって進め、早期の臨床応用の準備を行っている。また、病理学教室に大学院生を派遣し、主に小児腫瘍についての研究を進めている。

臨床教育については、知識のブラッシュアップのため、わが国での日本外科学会、日本小児外科学会、海外におけるPacific Association of Pediatric Surgeons(PAPS),International Pediatric Endosurgery group(IPEG)などの学会、研究会へ積極的に参加し、発表を行っている。また、若手医師にも積極的に発表のチャンスを与えている。九州大学小児外科には複数の関連病院があり、年に4回合同症例検討会を行い、稀少症例の検討を行なっている。久留米大学、京都府立医科大学、鹿児島大学小児外科と年に一度、合同症例検討会を開き、情報交換を行っている。

小児外科に関しては、和文の手術書が古いものしかなく、長年、海外の文献や教科書を参考にしていたが、近年、当科前教授田口智章が編集の中心となり、『スタンダード小児外科手術(2013)』『スタンダード小児がん手術(2017)』『スタンダード小児内視鏡外科手術(2020)』を上梓した。これらの著書には、多くの医局員が文筆を担当し、臨床教育に役立っている。また、英文教科書として、『Operative General Surgery, Neonates and Infants(2016)』『Hirschsprung’s Disease and the Allied Disorders Status Quo and Future Prospects of Treatment (2019)』を上梓した。また、メディカルスタッフへの教育として『ナースのための小児・新生児の外科疾患完全マスターガイド(2017)』も上梓している。
海外においては、ミャンマー連邦共和国、カンボジア王国などの小児人口が増加している中で、小児外科医数が不足している地域において、手術支援や小児外科医の育成に貢献している。